二つあること      - 鳥取県日吉津村の下水処理施設-

水道公論1997年11月号より

1,はじめに
 様々な行政の非効率が指摘されている。その代表例のように鳥取県日吉津村の双子の処理場が多くのマスコミに取り上げられている。批判の根拠として、同じものが隣り合って二つも必要ないというところから出ているようである。下水道の計画設計の常識からすると入念に工夫しているものと考えられるものが、大きな非効率の代表のように扱われている。
2,下水道計画設計からみて
 日吉津村の下水道計画は、下水道の計画設計技術からみると周到な工夫がされているものと理解できるものである。ここでは公共下水道事業と集落排水事業の二つの制度を活用して、二つの事業で設置される処理場を実質一つの処理場として管理できるように、施設を並べて配置している。個々の処理施設は、両事業の区域から排出される下水を処理するように計画されているので、一つでは処理能力が足りない。二処理区あれば処理区域の一番低いところに位置する処理場は離れるのが普通であるが日吉津村では幹線計画をよく考えて同じところに下水が集まるようにしている。 また二つの同じタイプの施設をもてば管理の合理化は図れるし、水量変化、点検補修などの時に運転の工夫ができる。下水処理場は二つ以上の処理ユニットを持つのが原則になっている。
 このように水関係の計画設計での基本的な考え方をあてはめて工夫して計画設計したと考えられる日吉津村の処理場がなぜ批判されるのだろうか。
3,ふたつあること
 この理由は公共施設では二つあること、とりわけ隣にあったりしたらおかしいことが多いからと考えられる。処理する水量によって大きさが決まったり、複数のユニットの方が望ましいという性格をもつものは少ない。
 公園、市役所、など公共施設は二つ以上ある場合は離れて置かれることが多い。交通量の少ない地方の生活道路で、一車線ならともかく、二車線の道路を隣り合って作ったらおかしい。
 小学校でも隣り合って置くことはない。生徒数が多くなり二つ必要な場合は通学を考えて離して設置する。従って公共施設が隣り合ってあったらおかしいという方が分かりやすく、印象も深くなる。
 公園も同じようなことがいえる。しかし公園のなかのテニスコートについて複数あることに異論はないだろう。テニスコートは建設費や運営を考え、数個のものが一カ所に並んで配置されることが多い。
 また機能上、
一つあれば足りるものと、利用状況に伴い、一つでは困るものがある。エレベーターも小さいビルであれば一つでいいが、大きくなってくると複数のエレベーターが必要になる。複数のエレベーターが必要なビルでは、待時間が少なく、定期点検などもしやすいなど管理上エレベーターは並んで置かれている。これも批判する人はいない。
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日吉津村の処理場
左が公共下水道ユニット  右が集落排水ユニット