逆転の思想−153        目次
              水道公論2016年2月号


  旅行目的の変化
 昨年参加した北欧ツアーの帰途コペンハーゲン空港の成田行き搭乗待合室で、近くにハンサムなデンマーク青年がいた。早速おばさま達が声をかけて話が弾み、そのうちに少しこみ入った話になって、応援を求められた。京都から瀬戸内海の直島に行きたいそうで、幸い行ったことがあったので、時間が短かったので十分でなかったが行き方など少し説明できた。
 直島は古い民家を改造したアート作品、いくつもの美術館、オブジェなどこれまでの概念の説明が難しい観光地で、体験型で映像になりにくいものもある。岡山から電車に50分乗って宇野港まで行き、そこから船で20分という遠いところで、日本でも多くの人が知らない。先日でかけた群馬県の人里離れた山中にぽつんとある木造の温泉旅館でもけっこう外国人が泊まっていた。
 日本人の海外旅行は街中でけっこう目立つ団体ツアーが主であるが、日本で外国人の団体ツアーはあまり見かけないので、個人旅行が多く、それだけ珍しいところに行く人の割合が高いのであろうか。
 映像技術が発達して、ハイビジョンでもけっこういい景観が表現できるのに、4kなどより高精細になり、右を向けば右の風景が写るヴァーチャルリアリテイの世界が手軽に楽しめるようになってきた。現地にいるような臨場感が増すことにより、有名な景色などわざわざ遠くに行かなくても味わえる現在、見るだけでは達成できないようなものが旅行のテーマに増えていくように感ずる。自分が主役になったり、他にない経験などの思い出が、旅行に占める比重を増していくと思われる。
 最近の筆者のツアーを考えると、水辺の写真撮影が主であるが、フランスの運河で閘門操作を手伝ったことや、ラクダに乗って砂漠を少し歩いたこと、イギリスで発車前の蒸気機関車の運転室に入って外から写真を撮らせてもらったことなどもいい思い出になっている。
 チュニジアでサハラ砂漠の縁まで行ったとき、宿泊したテント式ホテル近くの広場に沢山の自転車を積んだ大型トラックが止まっていた。ドイツ人のグループで、砂漠を自転車で走るツアーらしい。テントを張って寝ているようで、地元にあまりお金を落とさないため歓迎されないような気がするが。
 京都では最近レンタルの着物を着て、街巡りをする若い人が増えているようである。 
日本は生活や風俗が外国と相当違うので、現在や昔の生活などの体験型のものは、海外から多くの人に来てもらえるだろう。、和風料理作りを手伝ったり、侍や忍者の格好をしたり、お祭りで踊ったり練り歩いたり。銃保持が禁止され、犯罪の少ない安全な社会というのも大きな利点である。
ここで課題となるのが英語があまり通じないことと地方の公共交通機関の不便なことである。英語の方はそのうち良くなると思うが、公共交通の方は自動運転システムの普及まで待たないといけないのだろうか。大都市の朝の通勤ラッシュもどうだろうか。