逆転の思想−152        目次
              水道公論2016年1月号


  グローバル化テロへの対処
 欧州大規模テロでは、欧州内で自由に移動できることや携帯電話などによって移動しながら頻繁に仲間の連絡が取れることが目的達成の大きな要因のようである。ITの進歩によって外国の街並みの詳細まで遠くから見ることができる。
 このようにITの普及や交通の利便性向上によって、紛争地から遠く離れたところでテロが頻発するようになった。昔は、遙か彼方の国まで行くのも大変だったし、仲間との連絡も移動中や外国では非常に不便であった。情報の高度化などにより紛争が地域だけに留まらず、世界に拡散することになる。
 テロは残虐なことであるが、アラブ世界としてみると、パレスチナやウイグルで回教徒に対する非情な侵略が続いていて、止めようとする動きは全く弱い。こういう状況では、欧米社会などを十字軍と名付け、敵とするイスラム過激集団ISの大義が理解されやすい。テロだけが焦点を浴びて、その撲滅に世界が躍起になって、ISを壊滅させても大義に同調する人間が多い限りまた新たな勢力がでてくる。
これまで非常に安全であったために人の集まる多くの場所の警備体制などがおろそかで良かった日本社会であるが、警戒態勢の薄いところが絶好の狙い所となる。紛争地域から遠く離れていようが、多数の人が巻き込まれた世界的な事件を引き起こして、大騒ぎさせることが目的なのだから。混雑する場所が多く、監視がお粗末で、なんでも大騒ぎする日本はいい目標になるだろう。
 幸い、銃器保持が禁ぜられていることは、相当の防止効果がある。しかし、金属探知にかからないプラスチック爆弾など手段はいろいろある。満員電車への爆発物持ち込みが一番怖いが、通勤時間帯の手荷物検査など現状では不可能に近い。しかしこれを実行しなければならない時が近づいている。通行する人間から危険物を迅速に探知できる機械の開発が待たれる。
 テロを防ぐ基本的な方法は人の動きの把握であろう。誰がどんなことをしているか分かれば未然にあやしいことを準備していることが判断できる。最近各種犯罪捜査で監視カメラがけっこう役立っている。監視カメラを多数置くとか、危なそうな物質の販売記録など膨大なデータをIT処理することなどが考えられる。人の動きを諜報活動などで直接把握することが効果的であるが、社会主義国家ではできても個人のプライバシー保護が過剰なくらい重視される我が国では難しい。そこで、テロなどを起こさない状況にある個人を登録制にして、人の集まりそうな場所のあちこちで登録しない人の持ち物検査などを行うことが考えられる。どのみち検査強化はされるようになるのだから、安全で効率的な社会を保持するためにはこういうこともしなければならないだろう。