逆転の思想−150        目次
              水道公論2015年10月号


  待ち時間の印象
 先日コペンハーゲンをツアーで訪れた。人口58万人で街は美しいが観光客が非常に多いのに人魚姫と二つのお城などそれほど見るところは多くないため、人魚姫の立つ海岸などは観光客が殺到していて人垣を見物に行くようなものである。多数の観光バスの駐車場所確保が難問だとのこと。
 午後の自由時間に港や運河をめぐるボートツアーに乗るべく昼食場所から船着き場まで歩いて行った。ボート出発はなんと10分間隔で、撮影のためいい場所に座りたかったので一台見送った。次の船がすぐ来てお客がどんどん来て10分くらいでほぼいっぱいになって、出航した。ボートは座っていても屈みたくなるくらい低い橋の下を通るので屋根がない。また、4人掛けの座席が通路の両側に並び列は20いくつかなので180人くらいは乗れるけっこう大きなもので、満席まで待つこともしなかったが120人以上乗っていた。
 観光ボートの乗船場所はニューハウンという中心地と少し離れたところの計2箇所で、どこからも同じ型の船が頻繁に出ていて所要時間は1時間。2時間コースもある。
 市の中心部は2km×1km程度と小さい一方、その日に大型クルーズ船が6隻も入港していて、空路からも多数の観光客がきていると思われ、中心市街は人で溢れかえっている感じであった。感心したのがこれだけ沢山の人が乗りたいのに、待たせないことであった。
 雨の日は乗船客が大きく減るだろうし、短い夏が終わったら、寒風吹きさらしの船に乗ろうという観光客は激減すると思われ、9月から3月までは一日5回の運行となる。短期の観光シーズンが終わると多くのボートや職員が遊んでしまうことになるが、利用者にとってはありがたい。
 一方、日本ではディズニーランド、スカイツリーなど有名な観光地は時間単位で待たされ、それが人気度の尺度とされている。しかし客を待たせるというのは本来大変良くないサービスである。特に滞在期間が短いため、時間が貴重な海外からの観光客にとって、無駄に時間を取られるのはあってはならないことである。
 ドバイの世界一高いビル、ブルジェ・ファリファの展望台は時間指定の予約料金は安く、当日料金は4倍の1万円を超える価格と差を大きくして待ち時間を減らす工夫をしている。予約を主にすると混雑時期は早朝なども多数の人に来てもらえる。東京スカイツリーは予約料金が当日料金より2割も高い。これは当日の待ち行列ができるのをあおっているようなものである。満席を超えて立席になっても乗客を乗せる鉄道と同じようなことをしている。鉄道は非常時を除き、人を長時間待たせない。
 平気で客を長時間待たせることは最も悪いサービスで、顧客サービスがいいという評判の国でこういうことが横行しているのはおかしいことである。