逆転の思想−147        目次
              水道公論2015年7月号


  おかしいと気づくこと
 テニスのレッスンで一週間に一度顔を合わせるかどうかというおばさまから「床屋さんに行きましたね」など少しの変化を言われることがある。細かいことでも気がつく女性の観察眼はすごい。そこまでにはいかないが、ちょっとの間会わなかった知人が太ったり、スリムになったりしたのを感じて、そのことを言うとけっこう当たっている。
 こういう他愛ないことならいいが、何でもないようないろいろな事態を見て変化していることに気がつき、そこに何があるか感ずることは重要である。御嶽山噴火では2週間前から火山性地震の多発が観測されていて、火山性微動が始まったのは11分前であった。変化があったといってもこういう判断は難しい。ただ、ここでおかしいのはいつも安全が大騒ぎされ、盛り場並に人が集まる場所なのにたいしてお金のかからないコンクリート製の避難場所が何故ないのかということ。火砕流はともかく噴石から確実に身を守るためには必要なものである。御嶽山にないということは他もあまりないのだろう。今回火砕流は小規模で、登山道のない斜面で発生したため人的被害はなかった。
 おかしいと思うことの由来が理解できればいいが、分からない場合も多い。
 テレビでは放映内容を誰かチェックしていて誤字などすぐ訂正され、気を使っているようであるが、韓国の沈没事故では自動車の出入りのために構造がどうしても不安定で、荷物の過積載などが疑われているフェリーであるのに、いまだに旅客船と報道している。旅客船は貨物を運ばないものなのにおかしいと思わないのであろうか。不思議である。
最近、ネットでけっこう名のある経済アナリストや学者が、一般メディアで報道しない深い内容であることを売りに、有料が多いが発表しだした。多額の国債発行でもハイパーインフレにならないとか、なぜ坂本龍馬が高額な武器や船を買えるような資金を持つことができたのかなど。情報の範囲が広がるのはいいことである。知らないでいてある日突然にひどい目に遭うことは避けたい。第一次世界大戦が始まる直前、大方の人は誰もこんな悲惨なことが起きるとは考えていなかったそうである。
 4月にダライ・ラマが訪日されたことをネットで知った。一般メデイアで報道していないようである。このことは日頃報道の権利を主張して政府の干渉などに神経質な一方、諸説あってよくわからないがどこかに気を使って報道自粛していることを示しているようで、こういうふうになっていて他にもあるのだろうということを頭に入れておけばいい。ないことのおかしさに気付くことも大事である。