逆転の思想−97        目次
              水道公論2011年 1月号


  消費者金融のお金
 地下鉄の車内広告もけっこう世相を反映しているように思われる。現在健康食品など一般的な広告の中で「消費者金融や高金利のお金を取り戻します」という弁護士事務所、など、相変わらず金融関連のものが目に止まる。
 過払いの返還が多かった消費者金融大手の武富士が最近倒産した。過払いは、法制上のあいまいさから生まれた問題であった。出資法(出資の受け入れ、預り金及び金利等の取締に関する法律)の上限金利29.2%と利息制限法の上限15%(百万円以上の場合)の差がグレーゾーンと呼ばれ、消費者金融は従来高い方で運用していたが、2006年の裁判で返還義務が確定した。
 返還の負担額は大手4社(武富士、アイフル、プロミス、アコム)で1.7兆円ともいわれる。このことはグレーゾーンの金利で膨大なお金が借り手に課せられていたことになる。すでに1兆円は返還したようであるが、これが大きくのしかかったためか、武富士が経営悪化した。
 この連載37「数字の価値」で、2005年の企業所得高額50社に消費者金融が4社も入っていて、所得合計が3881億円もあり、その前年も4072億円と莫大な利益を上げていると書いたが、大手4社の現在の返還額が年3千億程度なので、利息制限法の運用がはっきりしていたら、高利の多額の利息をとられることもなく、自殺者も減っていたのだろう。返金されるとしても返還手続きでけっこうなお金を取られるだろうし、過去に金融会社が納めた事業税はそのままだろうなので、その分のお金は返ってこない。
 今回の武富士だけでなく、すでにアイフルは、裁判外紛争解決手続きによる再生の道を選んでいる。
 政府の多重債務者対策本部資料によれば平成19年から平成21年で、消費者金融などからお金を借りている人が1千2百万人から1千百万人となり、このうち多重債務者と考えられる3社以上から借り入れをしている人は443万人から320万人に減り、借入残高は19年3月で13.6兆円、平成20年3月で12兆円、平成21年3月で10.4兆と、減ってきてはいるが依然として多い。また統計に出ないヤミ金融が増えているとしたら状況は変わらないことになる。
 2006年の貸金業の規制等に関する法律の一部改正の際、このグレーゾーンの議論があった。
金利を低く設定すると、審査が厳しくなり、借りたい人が借りられず、ヤミ金融などを生むのでないかという議論である。
 消費者金融の車内広告が相変わらず多いのは、高金利でなくても充分利益が出るということなのだろうか。
 最近の特徴として、大銀行グループであることを記しているものが多い。安定した事業が保証されていますよということなのか、あくどいことはしませんよ、ということなのか。何故だろう。