逆転の思想−91     目次
              水道公論2010年 6月号


  文献検索システムの無料化
 
  20年前、下水道分野でない内外の技術論文を探していた頃、それを得られるのは国会図書館しかなかった。図書館に行って、閲覧申し込みをし、相当待って文献を借り出し、複写を依頼してまた長時間待って、コピーをもらい、文献を返却して次の文献の閲覧申し込みをするという非常に時間がかかる手続きであった。確か一度に3件しか閲覧申し込みができないので一日かかって数件の複写しか入手できなかった覚えがある。
 現在、国会図書館ではインターネットで検索ができ、学会誌論文などは複写依頼ができて、それを送ってくれるので研究活動にとって信じられないほどの進歩である。
 これまで文献検索システムは科学技術情報センターのものが便利であった。会費が高く、個人の利用は難しかったが、インターネットで文献の要約が示され複写郵送ができた。数年前から個人用に月500円で文献検索できるようになって便利になったが、このたび廃止される。一方JSTAGEというのができ、無料(学会によっては有料)で文献PDFがインターネットから只で得られるようになりつつある。このデータベースは投稿から公開まですべて電子化していくというもので、この流れは世界的のようである。まだ掲載学会誌は少なく、身の回りでいうと水環境学会誌くらいであるが、いずれ主流になるのだろう。
 国会図書館検索システムのPORTAはもともと無料であるが、文献の複写費は必要である。文献検索はこのほか国立情報学研究所のシステムCINIIもある。日本の学術論文を中心にしたもので、参考文献の索引に特徴がある。水道協会雑誌、下水道協会誌ともにPORTA、CINIIで検索ができるが、中味は複写請求しないと得られない。
 日本では文献検索の公共的なシステムが3つあることになる。ただしこの3データベースは連携・相乗りする方向にある。ただあまり一体化して、災害や事故などで全部一度に止まってしまうことは怖い。
 ここで新たな検索が出てきた。Googleである。 自己の持つデータベースに、無料であることを利用してJステージと、国立情報学研究所の検索システムを載せてしまった。いいとこ取りになっている。このほか国交省や土木研究所のHP内にある文献までも検索できる。
 インターネットの検索エンジンはここ10年でありとあらゆると思える情報源から瞬時に検索してくれ、内容も見ることができるようになってしまった。ただこれはインターネットに載っていないと調べられない。
 情報を只で入手できることはありがたいが、情報をつくる側に作業の対価が払われないと活動ができなくなってしまう。新刊の本が出たとたんに、インターネットで中身を見ることができるようになると本を買う人がいなくなってしまう。こういう世界で検索が今後どうなっていくのであろうか。
 また、多額の税金を使ってつくられた情報検索システムが、只乗りされるのはどうもおかしな気がする。やはりある程度の利用者負担は考えた方がいいと考える。