逆転の思想−89       目次
              水道公論2010年 4月号


  社会経済原則と思いつき施策
 
 最近の国の政策を見ていると経済原則や社会の効率化に反したようないろいろな施策が思いつきのように実施されている。まず高速道路の休日割引であるが、観光などで自動車交通量が増える時期に何故ピークがもっと集中してしまう方策をとるのであろうか。安くなるということはいいことであろうが特に連休が絡むときなど大渋滞になりそうで問題が多いと思われる。
 渋滞がなく、予定通りに旅行ができ、荷物が届くということは社会ができるだけ無駄がなく効率的に動いていく上で大切なことである。低炭素化社会にも大いに貢献する。
 渋滞が予想される場合、相当前に出発しなければならなかったり、荷物が遅れて到着し、待たされたり、急ぐ仕事が遅れたり、社会的なロスが大変大きい。基幹交通の信頼性保持は高度に発達した経済社会を維持していく上で非常に重要である。
 また、国債発行額がこれほどふくらんだ状態で大問題であるのに、高速料金を下げた分だけ、結果的に国の収入が減ることになり、債務の減少が止まってしまう。
 一方、休日の料金引き下げは、平日に遠出しようとする動きを封じてしまうことになる。観光地や温泉はできるだけ利用客が偏らないことが望ましい。温泉や観光地で平日の利用が多ければ、それだけ事業効率がよくなり、いいサービスが提供できるが、週末に集中する傾向がもっと強くなると、週末の人手の確保が大変な一方、平日には施設も人も生きないことになる。
 組織の中で仕事をしている多くの人々にとって平日にわざわざ休んで観光地に出かけることはただでさえ行きにくいのに、高速料金も高いままというのではますます行かなくなってしまう。社会全体の経済効率を考えても、利用者の便宜を図るなら、平日の高速料金を下げるべきである。
 直轄公共事業に対する地元負担であるが、国道整備にしろ、河川改修にしろ、事業が実施される地域に大きな価値があるから地方負担が求められているのではないか。地方負担は国直轄事業の効率性を保持する上で一定の力を持っていると思われる。直轄事業に対して公共団体の声が十分に反映されるようにすることは大事であるが、地方負担なしの直轄事業になると、負担なしで地方の財産が増えることになり、国に対する要請はずっと強くなり、政治力や権力の集中度が大幅に増すことになる。地元負担を廃止する意見は県知事から出ているが、これは県事業の市町村負担反対という形で跳ね返ってくる。
 昨年実施された、国民への一人1.2万円の定額給付金の価値はどうだったのだろう。家計にはまわったが、国の借金が2兆円増えてしまった。一方定額給付金の事務費が850億円くらいかかったと推定されるそうで、この出費の価値が広く議論されるべきところであろう。5千万通の通知はがきが送られ郵便事業が25億円売り上げ増になったことなど、何百億円の事務経費の価値があったのかどうか。過去に発行された2千円札の価値もどうだったのだろう。