逆転の思想−85     目次
              水道公論2009年 12月号


  都市鉄道の管理
 
 9月9日早朝に、地下鉄東西線東陽町駅で、保守の車両がホームに待機していた始発電車に衝突した。この事故で、一番混雑する朝のラッシュ時に電車が止まり、何十万人が影響を受けてしまった。保守車両の運転ミスらしい。
 最近、信号トラブルとか火事とか人為ミスによる事故で止まることが増えている。
 ラッシュ時の混み方が特に激しい東西線は快速の運転をしているが、快速通過待ち時間が長く、快速通過後、なかなか各停が発車しないなど、急行通過後すぐに各停が発車したり、次の列車がやってくる私鉄から見ると過剰なほど安全運転にこだわっているように見える。運行システムが古いこともあるのだろう。でも人為ミスは起こる。一方で、信号機とか、車両故障が増え、施設の保守管理レベルや、故障、事故防止体制の水準が相当低下しているようである。
 通常、快速運行のある通勤鉄道では、各停は座れるほど空いているが、東西線では快速の止まらない駅の乗降客が多いため、快速運行が多い帰宅時などは各停の方が混んでいるなどダイヤも変である。
 東西線、京葉線は海の近くを通るせいか強風の日に時々止まる。以前、地下鉄車両が鉄橋の上で脱線した事故からか、安全策として風速が一定の値を超えると止めるようになった。台風や大嵐というわけでもない日に突然運行停止になって、大きく迷惑を受けたことがここ2〜3年で何回もある。不思議なのは電車が止まっているのに羽田に降りる飛行機が次から次へと上空を通っていっていることである。飛行機は台風でも来ない限り飛んでいる。どうみても電車よりは飛行機の方が風に弱いと思うが。
 首都圏では毎日のように、各種原因による電車の運行停止がある。人身事故が多いが、設備や車両の故障も増えている。先日の京葉線の変電所火事による長時間運行停止は、線路を歩かされた乗客という絵になる事故だったのでやっと大きく報道された。
 今の世の中は、自殺でない人身事故を起こすと徹底的に叩かれるが何十万人の人間に多大な迷惑をかけることはあまりお咎めがない。頻繁に起こる人身事故も、自殺と思われ、貴重な人間の命が失われているのに何故かなんの報道もない。
 高度成長時代が終わって長らく経つのに人を貨物として考えているのか、世界に恥ずかしい超満員電車がいっこうに改善されず、今やインフルエンザの爆発的流行の最大要因となると思われるのに対策も聞かない。
 最近駅の自動改札機の何台かが、わざわざ切符や磁気定期券を通せない構造に変えられ、利用者を戸惑わせ、列が混乱して混雑に拍車をかけている。増設なら分かるが。
 時代遅れのような運行システム、保守や運転管理レベルの低下など、旧公営の鉄道事業が独占にあぐらをかいて、システムの革新、運行保持努力に欠け、なぜか批判もされない状況にあると感ずる。