逆転の思想−141        目次
              水道公論2015年1月号


  文書記録の保管
 テレビ番組では時々昔のことを調べに欧米の政府機関や市町村などの官庁事務所に行って、きれいに整理された倉庫から該当の文書記録を取り出して見せてもらう場面が出てくる。相当昔のことも保存しているようで、感心する。ひるがえって我が国の場合はどうであろうか。昔のことを調べるといっても課内のロッカーが頼りで、文書保管庫はあるが、ただ貯めてあっただけだったような憶えがある。こうなると昔の雑誌や本を読める、国会図書館などしか頼れなくなる。
20年前滋賀県庁に出向していたとき、地元同意が得られなくて着手が長期間遅れた流域下水道処理場建設事業の地元折衝の経緯を記録にするよう企画したが、すでに資料が散逸していて残っていなかった。あとで当時苦労された担当者に伺ったところ自分としては整理して事務所の後任に託したが、その後引っ越しなどで置く場所がなくなったのか処分されてしまったらしいとのことであった。
 以前住んでいた約30年前に建てられた団地の自治会報で、建物の配管の設計図書がないということがあった。事業実施したURにも残っていなかったようで、その後どうしたか分からないが設計図書が残っていないと修繕工事などの際お金をかけて調べなければならなくなる。
 現在、どこも昔の文書記録の保管が不十分のような感じで、戦争で焼かれたことや、倉庫が充分確保できなかったことのほか、日本人のすぐ忘れる習性からなのだろうか。
 しかし歴史的に見ると江戸時代までの日本は戦乱がそれほど厳しくなかったのか、地震などの自然現象記録をはじめ良く残っていると感ずる。
 資産管理の重要さが強調されている現在であるが、事業体で重要な施設の設計図面、設計変更後の工事完工図書などすぐ出てくるように系統的に保存するようになっているだろうか。
IT技術の発達により、膨大な文書もコピーして安価に保存できるようになった。こうなると保管の倉庫も少なくて済むし、電子文書保管ではただ保管するのでなく系統的に整理せざるを得ないので記録も残りやすくなる。ファイルの保管システムをつくっておけばだいぶ改善されると思うが。
筆者は写真は全てパソコンのHDDに収容していて、ここ10年の写真は探してすぐでてくるようになった。また、各種文書、表計算ファイルも整理は悪いがHDDに入っている。これで机のまわりがきれいになるはずが相変わらず書類の山になっている。各種パンフレット、本や雑誌、各種資料、切り抜きなどで、これをなんとかしないと。