逆転の思想−131        目次
              水道公論2014年2月号


  通勤手当の運用
 昨年9月に都の職員が24年間通勤届けをごまかし約318万円の通勤手当を不正受給していて、返納させられ懲戒処分を受けたというニュースがあった。
 自宅から最寄り駅までの間、バス通勤と届けて月額約1万円の通勤手当を受けていたが、実際はバスが不便なので駅近くに駐車場を借りて自家用車で通っていたというもの。
 ニュースからはどうして処分の対象になったのか理解ができない。近年遠距離通勤の県庁の職員など、本庁のある大都市は自動車通勤では時間がかるので鉄道を利用するが、自宅の地域では公共交通機関が不便なので駅近くに駐車場を借りてそこから電車に乗る通勤をしている人は多いと思われる。こういう通勤形態が規定にないか、あっても不当に安い額しか認めていないのだろう。
 首都圏では駐車料金が相当かかるので、もらっているより高いと思われる通勤代を支払っているはずなのに、規定にないからといって通勤手当が出ないというのはおかしいと考える。駐車場費の一部を支給している公共団体もある。
 通勤手当は必要なお金として支給されるものであり、実際その額以上に支出しているのなら問題ないはずである。通勤手当は利用できる交通機関の最低額で支払われるので、便利なので実際にもらう額より高い交通機関で通勤している人も多いだろう。規定がないのに、届けた経路通りに通勤しなければいけないというのはおかしい。
 この問題は税の運用も絡んでいると思われる。雇用者が職員の自動車通勤手当を払う場合は通勤距離によって通勤手当の最大額が定められていて、例えば8kmの場合月4100円を超えると通勤手当と認められないことになっている。従って駐車場代が支給されると給与とされて課税対象になってしまう。
 勤め先が用意した駐車スペースを利用する場合は雇用者負担になるし、大都市圏を除いて自動車通勤しかできないような社会になりつつある現在、当たり前の駐車場代が通勤手当に入れられないというのは変である。
 これまでも連載33の「手続文書の住所表示」で、中古マンションなどを買う人が、違法な引っ越し前の住所移転をさせられていること、連載20「規定の柔軟化」で、ソフトの進化で使えなくなったパソコンが税法の耐用年数規定のために廃棄できず、また、一人一台までしか認めないという慣例のため購入が難しく、やむなく備品費でない費用でパソコンを購入して処分されたなど、おかしな規制を取り上げてきた。最善の方法が規制のために実施できないというような、現実にあわないルールを正していくのが規制緩和の本旨であろう。