逆転の思想−130        目次
              水道公論2014年1月号


  職種の壁
 公務員の仕事を卒業して、よその世界の人とのおつきあいが広がった。その中に下水道の設備メーカーの人たちがいる。驚いたのが処理設備などの実務をやっている人の多くの大学時代の専攻が機械系でなく筆者と同じく都市、衛生、環境系の専攻学科出身であったことである。
 関連団体を含めて公務員として下水道に従事したい土木、都市、衛生、環境学科の希望者は土木系の職種の受験となる。下水道事業を実施する大都市、都道府県、下水道事業団では実務では土木、機械、電気、建築と分かれていて、担当は全部別で同じ処理場をつくるのに工事種別毎に図面も設計書も違う。
 同じ専門学科を出て、かたや基本設計と土木施設だけ、かたや機械設備だけしか仕事をしないというのは不思議で、幅を広げる必要があると考える。中小の事業体では、いろいろな職種の人を雇用できるわけでないので、一人でいろいろな種類の建設を担当しているであろう。
 電気設備も同様であると考える。下水処理場、ポンプ場のように、基本構成が定型化している施設では、電気技術の深い知識というより、如何に現場に合わせたものにするかや建設作業が難しくならないようにするかの方が大事である。定型施設の場合、電気設備の基本構成はそんなに難しいものでなく、少し勉強すれば大まかな判断ができるようになる。
 昔の例であるが、本来安定的で、運転が難しくないOD法のような施設に、溶存酸素計連動の高価な自動制御を組み込んだ設計があったことがある。
 電気設備には資格問題があるが、直営で設計する場合はともかく、設計委託される専門会社が持っていれば良いと考える。ただこれは設計委託の基本に絡む課題である。
 下水道施設の実態を知っていれば、設備系の人が、基本設計から建設までのまとめ役になることも十分できると考える。
 下水道法関連の規定を調べてみると、下水道法施行令十五条があり、設計または工事の監督管理を行う資格として、下水道工学を修めた大卒者と、修めなかった大卒者の経験年数に少し差はあるものの、職種の壁はない。どうも公務員試験の職種の壁が持ち込まれ、壁厚がどんどん増したようである。
 土木と建築がすごい壁をつくっていてこれを崩すのは大変であるが、土木と建築はけっこう独立している。ところが下水処理場など下水道施設は、土木構造物と設備が一体化して機能を果たすものであり、本来一つの機能のものを別な工事として扱うのはおかしい。
 他の世界などを見渡しても、この壁を崩すのは事業管理者の判断で良く、大きな障害があるようには思えない。
 業務の効率化、簡素化と現場業務の改善見直しを考えるべき事業運営責任者の問題のように思える。