逆転の思想−122        目次
              水道公論2013年4月号


  円預金のリスク
 円安が続いている。円/ドルは昨年10月に78円近くであったのがみるみる上昇してきた。最近の傾向を見ると阪神淡路大震災のあった平成7年春に80円を切ったがその後上昇し3年後の夏に150円近くまでに上昇した。その後変動はあるものの、少しずつ円高が進んで、平成23年、24年には一時76円台までになった。
  平成10年は近年で一番のドル高で、1年半前の90円台から4割近く上がった。今後為替の揺れの範囲がこれまでと同じかもしれないし、原発停止でエネルギー輸入が7兆円近くも増えたことから、もっとひどくなるかもしれない。
 相当のドル高であった平成10年頃、物価上昇の記憶があまりないので今回も大丈夫な感がある。しかし当時は電気製品、日用品など殆ど国産品であった憶えがあり、国産品であれば値上がりするのはエネルギー費と原材料費くらいなので影響が少なかった思われる。現在は皆中国など外国から入ってきていて、値上がりしやすいのでないだろうか。
回りの人と金融や投資の話をすることがあるが、株や投資信託で損して塩漬けになってるという人が多い。金融証券界では移りゆく諸情勢の中で、基本的に儲かったお金と損したお金が同じであるので、素人でお金を増やすことは難しい。大投資家のソロス氏が今回の円安を利用して1千億円儲けたそうであるが、この分高値で円を買った誰かが損をしていることになる。証券会社は調子がいいときにはいろいろ勧誘するがどうだろうか。
ここ15年の米国のインフレ率は平均2.4%で、一方日本のデフレ率は平均0.3%であった。これから物価を考慮したレート変化を計算すると、昔120円であったのが今は80円となる。この限りでは、ここ10年以上続く円高は、妥当な数字といえることになる。
 円安は輸出企業にはいいが、老後の蓄えを持つ年金世代にはどうなのだろうか。
 アベノミクスでインフレ目標を2%としているが、これが実現されると今のゼロ利回りでは預金の価値が年々2%減っていき、10年後には今の8割の価値となってしまう。利率が連動して上昇するとなると、預金はいいが国債の値段が下がる。10年国債は新発もので現在の利率が0.75%であり、利率が2%となると、国債価格は1割くらい下がることになる。そうなると国債を大量に保持している銀行などがどんどん国債を売ることが考えられ、国債価格はもっと下がると思われる。筆者は円のリスクが怖いので老後のためのお金をけっこう外貨にしている。
円安は預金者にとって、使えるお金が減ってしまうことであり、為替変動はそれだけお金の価値が不安定なことを示す。そう考えるとなけなしの貯蓄が円預金や国債だけというのは、リスクが高いということになる。ただし、円安の時に外貨資産を増やして、その後円高になった場合、損をしてしまうことを考えなければならない。