逆転の思想−120        目次
              水道公論2013年2月号


  きっかけを読み取る
 技術開発でも商品化でも最初に気がついて、先入観にとらわれず柔軟に考えることが重要であるが、なかなか難しい。
 落差マンホールについて、規格化や商品化が進んでいるが、きっかけは小さなことであった。筆者が建設省に勤めていたころ、ある日新規の流域下水道計画の承認があがってきた。地形の関係で幹線の土かぶりが20m近くなるもので、枝線の流入を考えると水理学的研究も絡む、ちゃんとした落差工が必要になると思い、発足したばかりの下水道新技術推進機構に研究依頼することを事業主体である県にお願いした。
 ところが機構から、委託予定金額が少ないとして難色を示されてしまった。確かに少なかったし、発足後まもなく、体制も不十分で、財政的にも厳しい状況にあったから当然のことである。しかし折角だからと再度お願いしたら、機構の鈴木茂さんが私がやりましょうと引き取って研究をやっていただいた。その後研究開発が進み今の形になっている。幹線のマンホールについてはやらなければならないことも残っているが、落差工できっかけがなかったらどうなっていただろうか。
今をときめくスマートフォンも、操作ボタンに執着しなかったこと、指で画面を動かしたり、拡大させたりするというちょっとした機能の差で大きく差をつけてしまった。
小さい面積の中で、画面を広げて操作ボタンを縮小するという選択はなかなかできない。 Windows8の前評判が悪くなかったので、最近購入して感ずることがある。
 スマートフォンやiPadの成功につられて、windows8ではタイル画面を併用している。それはそれでいいのだが、パソコンの大画面の有利性を過小視して、画面の側面にあった操作パネルが少なくなり、使いにくくなった。起動や終了は早いが、結構操作途中で、操作パネルが全く出なくなることが多い。スマートフォンでは戻りのボタンがあってそれを押せばいいが、パソコンではこれがない。マウスを隅に持って行くといろいろなパネルが出てくるのでこれを使うことになるが、前の画面に戻ることは難しいことが多く、こころもとない。新しい操作をすぐ覚える若い人は良いだろうが、簡単な操作しかできない身ではなじみにくい。
 スマートフォンでも購入店で長時間教えてもらわないと基本操作もできないのでこういうものなのか。
 パソコンを終了するのに、マウスを右下の何もない隅に持って行くと、アイコンが出てきて、その歯車をクリックしてやっと電源ボタンが出てくる。機械を終了させるのに、マニュアルを引っ張り出してよく読まないとわからないというのは初めてのことであった。パソコンの特長である、画面が広いので、へりに操作パネルをおいてマウスで多種な操作ができる良いところが消されている感じである。
 きっかけは大事だし、うまく使いこなさないとものにならない。