逆転の思想−116        目次
              水道公論2012年9月号


  国家の持続
 我が国の体制がリセットされて67年過ぎた。窮乏の時代から高度成長し、世界有数の工業国になって、いまや高齢化が急速に進み、将来が見通せない時代に入っている。国民が安心して長期にわたり繁栄していくため、国家体制ができるだけ長続きすることが必要であるが、このためには時代や周辺環境などの変化に適切に対応して、国としての制度、骨格を変えていく自動安定機構が不可欠である。
 高齢化、周辺国の変化、国際化、科学の進歩、情報化、地球温暖化などの大きな課題について、状勢の変化に的確に追随して基本的なシステムや構造の変革を行っていかなければいけないが、憲法など法制度など変革がなかなか進まず、国の持続が危ぶまれる。
 紀元後の世界を考える。日本で国がどれくらい長続きしたのを見てみると、平安時代が最も長く391年、次いで江戸時代の264年。平安時代は、かなが発明され、日本語表記ができるようになり、源氏物語や枕草子など全く新たな文学作品が生み出され、寝殿造りのような固有の建築様式も誕生した。江戸時代は寺子屋等の普及などによる教育水準の向上があったし、浮世絵などの絵画、陶芸など高水準の芸術が開花した。欧米による外圧がなかったらもっと長かったのだろう。考えてみるといろいろな問題は出ていたが国としてまとまっていたので、植民地になることを免れたと思われる。
 時代が長く続くということは、社会経済が安定し、文化が高度に発達するということだろうか。
 世界を見ると中国では各王朝とも2百年程度である。一番長かったの清王朝の268年。
ローマ帝国の歴史は紀元前数世紀まで及ぶが一般にオクタウィアヌスが尊厳者となった紀元前27年から東西に分裂した395年とすると422年である。
 一番長く続いている国はスイスである。連邦ができたのが1531年。1800年頃までは不安定であったが、1815年に永世中立が認められた。人口は僅か750万人で、独、仏、伊、ロマンシュと公用語がいくつもあって、国の方針を議論するのが大変と思われるし、しかも同じ言葉を話す隣国が当事者となった激しい二度の大戦も中立を守ってきた。しかも豊かな国である。
スイス憲法は頻繁に改定され、2千年の大改正以降も6回以上変わっている。
憲法の改正というといつも第九条が問題になるが、他にもある。十五条で「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。」とあり、四十三条で国会議員の選挙のことを言っているので、それでは公務員とはなんだということになる。
 67年も変わらなかったというのは、柔軟なものなのか拡張解釈してどうにでもなるようにしているのか。
 一方、各種法律体系も継ぎ足しばかりのようで整理されないままどんどん複雑になっているように感ずる。
 あと伸ばしばかりで正当な仕事をしていない立法機関の仕分けをやってほしいものであるが、選ぶ方が悪いのか。