逆転の思想−106        目次
              水道公論2011年10月号


  バブルのはじける時
 リーマンショックなど世界的大不況に追い込んだもととなる、米国、欧州の不動産バブルで多くの人が被害を受けた。
 経済バブルの始まりは17世紀オランダのチューリップバブルといわれている。オスマン帝国から輸入されたチューリップの球根が品種改良され、斑入りのきれいな品種ができるなどして愛好家の間で高く取引されていたところ、投機筋が参入し、球根一つと邸宅が交換されるくらいにもなった。球根栽培という増殖が遅いことが、投機しやすい環境をもたらしたこともある。その後大衆も手を出すようになり、大儲けするものも出てきたが長く続かず大暴落した。
 以来幾多のバブルがふくれて消えた。
 最も壮大であったのが日本の土地バブルであろう。戦後すぐから始まり、壮大な兎小屋の街をつくり、多数の高額所得者を生んで、1980年代後期には、山手線内側の土地価格でアメリカ全土を買えるというくらいひどくなった。調子に乗った銀行や不動産会社は海外で法外な値段で、有名な不動産を買い込み、あとで大やけどしたのが記憶に残っている。この頃日本に入ってきたお金が、本来の稼ぎ手のメーカーや海外にくわしい商社にちゃんと行っていたら、やけどやその後の失われた10年がそんなにひどいことにはならなかったと思われる。
 バブルで怖いのが殆どの人がこの不思議な現象を不思議と思わないことである。メディアも無責任にどんどんあおる。逆に言えば多くの人がおかしいと思ったらバブルはおこらない。
 米国の不動産バブルがはじける相当前に故渡部美智男代議士が「アッケラカのカー」とアメリカの不動産事情がおかしいことを指摘されたが、差別的な言葉があったために、本質論でないところで批判されてしまった。
 金の値段が上がっている。田中貴金属の資料によれば、2000年頃には1g当たり千円くらいだったのが、5千円に近づこうとしている。主要国の経済がおかしくて他に信用できるものがないということで値上がりしているとされるが、バブルに入っているとも考えられる。金は産業用需要より、宝飾品や個人資産として買われるものが多いので、価格は変動しやすい。
 ここ40年を見ると1回1980年頃に高騰し、6495円までになった。これからみると今年8月23日の4980円はまだ低いが、円高の影響があり、ドルで考えると、1980年の高騰時で27ドルだったのが、今年8月23日では62ドルと2倍以上になっている。この上昇を平均すると年間約3%となる。ドルの下落を考えるともう少し金価格は上昇しそうであるが、バブルは早晩終わるように思われる。
 米国の不動産バブルがはじける直前に、サブプライムローンを大量に売却して、莫大な金額を稼いだ証券会社があったそうで、金でもバブルがはじける時を予測できれば大きなお金を稼ぐことができるが、いつなのだろうか。