逆転の思想−105        目次
              水道公論2011年 9月号


  セミの環境
 例年、暑い夏が始まると同時くらいにうるさく鳴き出すのがセミで、夏を強く実感させられる存在となっている。今住んでいる西葛西は30年以上前に埋め立てた団地で、いまや木も大きくなり、鳥も多く、きれいな尾長も棲み着いているし、セミがすごく多い。鳴き声がよく聞こえるのがミンミンゼミとクマゼミであるが、数としてはアブラゼミがとても多く、高層階でも毎年アブラゼミの死骸が一つ二つベランダに転がっていた。そういえば10年前松戸から越してきた次の夏一番に、松戸では全くいなかったクマゼミの鳴き声に驚いて、温暖化が進んでいることを実感したことがあった。クマゼミは関西にいたときには耳にこびりついていたが、関東ではいなかったはずであった。東海地方ではクマゼミがアブラゼミよりも多くなっているそうである。
 子供の頃、夏休みに大磯の母親の実家に行かせてもらい、裏山でよくセミ取りをしたが、アブラゼミとニイニイゼミが主流で、ミンミンゼミが続き、カナカナとツクツクボウシは声は聞くがなかなか捕れなかった。今どうなっているだろうか。
 今年は梅雨が明け、夏が始まったのは7月10日頃であったが、セミの鳴き声がしばらく全く聞かれず、不気味な感じであった。梅雨明けが少し早くてセミが出てくるのが遅かったとも思われたが、全滅したのでないかと心配した。
 団地内は比較的新しい埋め立て地で中高層の集合住宅が並び、高盛り土したためか、上下水道、電気、ガスとも使用停止はなかったが、いたるところ流動化で細砂が吹き出していた。流動化でセミの潜っている穴も液状の砂でふさがってしまい、窒息したのでないかと思われた。アブラゼミは生まれてすぐ地中に潜り、5〜6年後に地上に出てくるので、一度いなくなってしまうと、回復に長い年月が必要となる。
 団地では2mくらいの高さの築山に植栽したところもけっこうあり、こういうところでは大丈夫ではないかと思っていたところ、8月に入りやっとミンミンゼミが鳴き出し、少し遅れてクマゼミの声も聞こえるようになり、アブラゼミの屍もけっこう増えた。例年だと学校の夏休みに入ると同時くらいであるが、やけに遅く、鳴き声がうるさい程度でないので、やはり液状化で少しやられたと思われるが、樹木の根元は液状化しにくいだろうし、セミの羽化数は年によって変動するのではっきりしない。ともかく、来年も鳴き声が聞けそうであり、安心している。
 今年は全国的にセミの羽化が遅かったようで、3月4月が寒かったせいなのかとか、その原因を知りたいものである。