逆転の思想−103        目次
              水道公論2011年 7月号


  FXの罠
 大震災直後、不思議なことに円は急激に値上がりし、3月17日に76円まで上がってしまい、3月18日のG7緊急電話会議で声明発表後、協調介入があって値下がりし、一時85円台まで下がった。
 この現象は、大震災の混乱期に乗じ、海外投機筋がFX(外国為替証拠金取引)を行っている日本の個人投資家を狙ったものらしい
 FXは取引会社に納めた証拠金の範囲で、多額の為替取引ができる仕組みになっている。預金利息が0に近く、収入の増えない家庭主婦が家計費を稼ぐためなどで行っているらしく、多額のお金を稼いだカリスマ主婦が話題になるなど、一時FXが大きく宣伝された。
 日本では財産運用を主婦が行っていることが多いのか、日本の投資家はミセス・ワタナベと呼ばれているが、この中でリスクの高いFXをしている人々が狙われた。
 外国為替は一方的に片方に流れることは少なく、円高になったり、円安になったりして推移する。このことから円高になったら、外貨を買って、その後の円安のときに外貨を売ると差額が儲かる。この単純な逆張り投資を多くの日本の投資家が行っているようであり、この動きは為替の安定化にもつながる。77円の時に、1万米ドルを77万円で買って、85円の時に売れば85万円戻り、8万円利益がでることになる。
 今回、このはずが、FXの仕組みをうまく投機筋に狙われた。これは一定の評価損が発生した場合、強制的に損失を確定する「ロスカット」というルールがあるためである。
 円高になったので外貨を買った後、想定外の円高が進み、損失が証拠金をもとにした制限額の範囲を超えてしまい、多くの投資家が強制的に外貨を売って円を買い戻させられることになったからで、この強制決済が、ますますの円高を招いたらしい。その後円安になっても、もう手が出ない。為替相場は17日未明まで79円台で推移していたが、同日午前6時過ぎのシドニー市場で一気に76円25銭と約20分程度で3円も円高が進んだ。為替の変動に、もっと耐えられるFXの取引をするなり、単純な外貨の売り買いを行っていればひどい損をすることはなく、やはり、リスクの大きい取引は要注意である。
 海外投機筋は、日本投資家の動きの鈍い早朝に、はじめ多額の円を買って円高をしかけ、円がつり上がったところで、今度はもっと多額の円売りを行い、円安が進んだところで円を買い戻すことによって大きな利ざやを稼いだらしい。円安にするG7の協調介入もそれを助けたことになる。
 普通大災害がおこればその国の通貨は弱くなるはずなのに、急激な円高がおこったのはハゲタカが相変わらず元気で、大きなお金を動かしてG7の財政出動までも利用し、荒稼ぎしていることを示しているようである。