逆転の思想−101        目次
              水道公論2011年 5月号


  大津波復興策ー高層住宅早期建設
 今回の津波は、対策の考え方を基本的に変えなければいけないことを示している。数mしか対処できない防波堤には限界があり、十数m以上の津波に耐えるよう、お金を最も効率的につぎ込まなければいけない。
 これまで大きな津波のあと、高台に住むことが大事と分かっていても、ついつい便利な低地に、高い密度で家が造られてきた。これから対策の重点は低地のシェルター整備ということになるが、大がかりなものになってしまう。
 今回の津波で特徴的だったことは鉄筋コンクリートの建物が殆ど無事で、避難場所にもなったこと。そこで今後の津波対策の基本は、安心して避難できる10階以上の高層の建物を低地のあちこちにつくって早期避難ができるようにしておくことである。津波で低層部分がやられても、建物の相当の部分が残るので、復旧費用も少なくなり、食料、生活物資など上の階の人の分が確保でき、何もない状態とは全然違う。屋上まで10分で到着できる例えば300mの範囲内でこのような集合住宅を建てれば、住宅建設と防災を兼ねた効率的な方策となる。
 低地に住むなといってもリアス式の地形では高台の土地もほとんどないので、他に行けというのと同じである。仮設住宅を建てる場所も少ない。一方、平屋の仮設住宅が低地にあったら皆敬遠するであろう。平地が広く、近くに高台のないところもある。
 仮設住宅の建設と平行して、津波被災地域に、高層住宅建設を進めればその分住宅難の解消が進む。
 一方、鉄筋コンクリートの建物は、高コストで、長く使えるようにしないといけない。
 そこで、一戸あたり広めの高層住宅にして、当面一戸に複数家族が応急的に暮らし、その後住宅事情が良くなったら普通の住宅にしていくことにより、長期に住環境が確保される。1、2階に商店や事務所、公共施設などの場所を確保することもあるだろう。
 避難施設を兼ねた高層住宅は国の債務で建設し、家賃は通常の住宅になったときにもらうようにすれば、公的な負担も相当減るであろう。
 高層住宅の建設には比較的広い土地が必要であるが、津波によってすべて流されてしまった地域では、震災直後は土地確保がしやすく、また用地契約などを後回しにすることで、建設の早期着手ができる。建物の高さをたとえば12階とかに地域ごとに決め、窓枠ないし、ベランダなどで統一の色を使うようにすることにより、街の景観が確保される。
 以上、津波の恒久対策として、一定の避難距離で国が負担する高層の建物を市町村が計画し、仮設住宅整備と平行して緊急に建設し、大津波に耐えられる街造りを早期に進めることが望まれる。
 海底が5mも隆起したこのような大津波は三陸沖だけに限られることはなく、東南海地震対象地域でも同様な防災対策が必要と思われる。