自然との関わり合い

月刊下水道 Vol.21 No.16 1998 より

5,人にとって都合の良い自然環境
 最近、人里離れた所が生活圏だった生物が都会に進出している例が多い。
 その理由として、生活程度の向上によりけっこう食べ物が捨てられるようになったことと、暖かい地方にいた生物が暖房で冬も都会で耐えられるようになったことがある。スズメが暮らしやすくなったことにより、それをねらってハヤブサ類の
チョウゲンボウが都会に進出しているのは悪くないが、ゴミを餌にし始めたスズメ蜂も繁殖力が強くなった。軽業師のように身軽で警戒心が強く駆除が難しいクマネズミが暖かいビルや家屋内で地の利を得て、都会のビルや住宅地で急激に増えていると言われる。人の世界に自然が入り込んでくるにつれて有害な生物も入ってくる。
 最近増えている生物だけでなく、のみ、蚊やゴキブリなど人に被害を与えたり、病原菌の伝染を媒介する生物は駆除が当然の存在となっている。このように
自然との共生も、人に都合のいい生物だけが対象になる。
6,共生の認識
 以上、自然と人里の境界線がはっきりしなくなりつつある状況において、特に求められるのは共生の考えの徹底であろう。山菜取りに行って根こそぎにするのでなく、次の年もまた生えてくるような配慮、渓流釣りで小さい魚を放すなど、出来るだけ多くの生物が生息する環境にしていくことが要求されている。野鳥などを見て楽しむバードウオッチングと言う言葉が一般化しているように、自然の生態を出来るだけ乱さないように配慮した活動も定着してきている。

 しかしこれらはあくまでも人に都合の良い範囲でのことを良く認識しておかなければならない。

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