医療事故への対処

日本下水道新聞2001.2.13

 最近手術、点滴など医療現場における処置ミスが大きく取り上げられている。患者の取り違え、点滴薬の間違いなど判断ミスによるものが多い。これに対する論調は起こるはずのないミスをおかしているという印象である。医療事故より誤りの意味が強い感がする医療過誤という言葉が使われている。しょせん人のやることにミスはつきものである。

 交通事故を考えると死者は昔に比べ減っているというものの年間に百万人近い負傷者と約九千人の死者を出している。一日二十人以上の方々が亡くなっている。交通事故の原因も人のミスによるもので、プロの運転手の事故も多い。交通でのミスがなくなれば年一万人の命が救われることになる。

 死亡事故の場合、交通事故では大きくないと報道されない。一方、自然災害による死者は年間百人程度であるが、災害は大きく報道され、犯人探しがはじまる。珍しいことが報道される特性はわかるが、少ないことの方が強く非難されるのはどうだろうか。

 医療の世界は進歩が早い。医学的知見、医薬品、処置方法など新しいものが次から次へと登場してくる。診療には高度で複雑な判断が必要で、その分ミスも出やすくなる。一方、小児科がどんどん廃止されるなど、多くの病院の運営が苦しく、合理化が至上命令のもと医師と看護婦などスタッフが、多くの仕事をこなさなければならない状況にある。過労にもなる。

 事故を防止するためには適正な勤務体制とミスが起きないようにするためのシステムの確立が必要である。例えば、病状と処方薬とのチェック、注射薬と点滴薬との開け口が異なるようにするとか様々なシステムが考えられ、皆医療コストを引き上げる要素となる。今のようなレベルの事故発生率で我慢するのか、発生防止の措置を行って費用増加を認めるのか前向きな論調が必要と考える。