逆転の思想−83
              水道公論2009年 10月号


  良好な都市景観
 
 都市の良好な景観を形成する主要なものは、まず、大きな建造物と集合としての街並みであろう。水辺や緑も大きな要素となる。また、花の飾り付けもいい。
 大きな構造物としてはエッフェル塔、ロンドン塔、シドニーのオペラハウスなど。ただ、周辺に公園や水辺など空間がないと写真にならず、街の売り物にならない。
 集合した街並みは揃っているといい景観となるが、ばらばらだとあまり見る気にならない。揃った街並みは南欧の街々のオレンジ色の瓦屋根、エーゲ海の島々の家々の真っ白な壁などがあり、見事である。
 翻って見て最近の東京はどうだろう。大きな構造物では新宿の都庁舎、オリンピックスタジアムがある。都庁舎は落ち着けないなど、最初、中で働く人々にはあまり評判が良くなかったが、外観は東京の顔になりつつある。
 東京タワーは技術的にはいいものであろうが建設以来ずっと評判が良くなくて、ライトアップなどを工夫してやっと最近認められるようになった。
 デザインがいいものは得てして管理がしにくいものらしい。以前聞いた話であるが、京都の国際会議場は景観はいいが、メンテ費用が大きくかかり、管理者を悩ましていたらしい。
 最近建てられた無難なデザインのレインボーブリッジはどうだろうか。臨海部開発に合わせて急遽プロジェクトが進んだものなので、デザインに凝る時間がなかったのか。いいデザインのものであれば東京の新しい顔になったのに残念である。
建設のはじまった新しいテレビ塔の外観予想図を見ると何か新興発展途上国の景観という気がする。
 ただ景観の判断は難しい。エッフェル塔は1889年、パリ万博の時に建てられたが、当時激しい反対運動があった。多くの芸術家だけでなく、教科書に出てくるような有名な多数の科学者も反対した。当時反対運動で建設がくじけていたら今のパリを象徴するような塔はなかっただろう。逆に反対の動きがないというのは特徴がないということかもしれない。
 京都タワーと新京都駅の建設時期は相当ずれているが、両方とも建設時に大きな論争があった。新京都駅は、上の通路がいつも混雑しているけれど、デザインとしては良かったと思うが、後世の評価がどうなるだろうか。
 東京の街並みはビルも家々もばらばらであまりいい写真にならない。建物の屋根ないし壁の色を統一しようという試みがあってもいいと思うが、既成市街地ではとても無理であろう。新橋再開発で建てられた超高層ビルもデザインがまちまちである。何か、小さいことでも統一しても良かったと思うが
 我が国では昔はどこも統一された街並みできれいだったのに、今では、小京都、保存された宿場町など一部残っているだけで大規模なものがないのが残念である。