逆転の思想−82
              水道公論2009年 9月号


  格付け会社の責任
 
 債券などの信頼度をAAAとかBBとか簡単な表示で格付けする機関である。日本でも株式会社日本格付研究所、株式会社格付投資情報センターが設立されている。
 だいぶ前に日本の国債を最低水準にランク付けして話題になったが、とんでもないバブルを招いた詐欺とも言える金融商品に高格付けを与えていたとして批判の対象になっている。
 国債などの格付け行為は別にお金をもらっているわけではないだろう。お金をもらっていたら別な評価になったかもしれない。それでは運営費がどこからでているのだろうか。どうもムーディズやS&Pに代表される格付け機関は、証券会社が債券や投資信託を発行する際に依頼されて格付けをし、それが収入源のようである。営利会社なのであるから格付け機関というより格付け会社というべき存在であろう。一般に評価行為で採算をとるのは製品の販売などと違い、難しいと思えるがよくできるものである。
 審査する者が審査される者からお金をもらうというのは公正な事業運営からするとどうだろうか。確かに建築確認などの手続きはお金が払われるが、判断基準が国の基準でしっかりしているので、裁量が働きにくいと思われるが、金融商品の審査は審査者の独自のもので、相対的ランク付けとなると担当者の判断でけっこうどうにでもなるような感がある。審査基準があいまいな状況で、審査される者がお金を払う仕組みはおかしいことであり、本来正されなければいけないものである。
 サブプライム関連の金融商品は構成が非常に複雑で専門家でも評価が大変難しい。リスクがわからないものは、本来リスクが高いと判断されなければならないのに、分からないまま高い評価を与えてしまった。
 つまり金融商品購入者をみんなでだましたことになる。
 我が国では金融庁が指定格付け機関を定めていて、日本の2社を含め名前の上がっている5社が指定されている。有価証券届出書や目論見書の発行の時、格付けは指定機関のものが必要になる。これは格付け会社の信頼性に国のお墨付きがあることに受け取られる。
 こうなると怪しげな金融商品の氾濫は売りまくった金融機関だけでなく、金融界全体がそれに乗っていたとことになる。この責任はどうとるのであろうか。会社の監査をおこなうコンサルタントが粉飾決算の時に厳しく罪を問われるのとずいぶん違う。
 ボツアナと同じといわれた日本国債の格付けであるが、ムーディズでは7年前に上から6番目のA2まで格下げしていた。といってもこの下にはB、Cなど沢山ランクがある。最近、何故か格上げをはじめ、上から3番目のAa2まで上がってきた。どうも、信用が落ちつつある米国債の格を守るため相対的にそうしているらしい。