逆転の思想-75
              水道公論2009年 2月号


  ロシアの断片
 
 情報化がこれほど進んでいるのに外国の実態となるとよく分からない。大方の情報が珍しい事しか報道しないメデイアからのもので、重要ではあるが面白くない普通のことが伝わらないので理解が進まないことがあるのであろう。
 先年ロシアに観光ツアーで行き、情報の空白をけっこう実感した。
 最も驚いたのは現地ガイドが全員日本語に堪能であったことである。モスクワ周辺とサンクトペテルブルグに6日いたが毎日来るガイドは全部ちゃんとした日本語で説明した。モスクワで半日個人ガイドを頼んだがこの人もきれいな日本語であった。昔通信社にいて、日本にも数年勤務したそうである。今は退職して年金生活であるが、アルバイトでガイドをやっている。他の大手旅行会社にも聞いたが、日本語で説明するガイドが普通のようである。
 欧州では現地ガイドは英語が主で、日本語を話す人は殆どいないので差が目立つ。旅程が朝から晩まで長時間に及ぶため、時々補助のガイドが来たが、この人々もある程度の日本語を話す。サンクトペテルブルグでその補助ガイドに聞いたら日本語学科の大学院生であった。ロシアではけっこう日本語学科があるらしい。ガイドに大学院生が来て、けっこう話ができるということは、高度の大学教育がなされていることであろう。また日本語を学ぶ人間がこれだけいるのは国として関心があるからと思われる。旧ソ連圏の国々もそのような話がある。日本語に熟達しても勤め先がガイドくらいしかないというのであれば困る。日本語を学んだことが良かったと思われるようにしていく必要がある。
 これまで情報があまり入って来なかったのは中国、北朝鮮寄りであったメディアがソ連には冷たかったからなのだろうか。
 モスクワはある面東京に似ている。交通ラッシュが激しく、自動車では時間が読めないことがある。またどうも住宅事情はあまりよくなく、かっての衛星国の方がずっといいように思える。モスクワの住居は基本的にアパート形式で狭いようである。冬の暖房が生命に関わる問題で、発電所からのお湯の供給など効率的にできるためアパート形式になっている。集合住宅が主であるので緑地が沢山確保できている。
 有名な地下鉄は最近スリなどが多く、ツアーではお勧めでなかったが、個人ガイドで乗せてもらった。駅は非常に深く、ホームは立派なものが多い。ヨーロッパと思われる団体ツアーが入っていた。長いエスカレーターがあるが故障の時は大変であろう。車両は古く、しっかり止まる前にドアを開けたり、つり革がなく、高いバーにつかまるのに苦労するなどのことはあるが列車は次から次へと入ってくる。東京の地下鉄もこうあってほしい。
 長らく体制がまったく違う国であったため、世の中が相当違うシステムになっているようで、学ぶべきことも多いと思う