逆転の思想-72
              水道公論2008年 11月号


  掛け流しと環境
 
 各種の立食パーティでいつも思うのは残った料理のもったいなさである。たまに料理が残らない会があると本来これでいいのに食べ物が少なかったと、主催者が反省することとなる。
 パーティでは全然食べない人が多い。小生も、いろいろな人と話をして、ご馳走をあまり食べられないうちににお開きの時間が来て、残り物に残念な思いをしながら帰るはめになることが多い。
 最近は家畜のエサになったりするようにリサイクルが進んできているが、パーティの料理はやはり高価なご馳走であるし、人が食べるべきものである。
 コース料理などビュッフェでない場合は、けっこう残さないで食べられる。
 ビュッフェの残り物を集めて再びきれいな状況にして安いお金でまたビュッフェスタイルで食べてもらうことができるであろうか?しかし現在の答えは否であろう。ホテルの場合は会場費も高いので食べ物が安くなっても、総コストはあまり下がらないし、体面もあるだろう。
 ご馳走が無駄になっていることは、我が国の生活を支える生産工場で、血のにじむコストダウン、合理化が行われている状況とあまりにもかけ離れている。レデュース、リユース、リサイクルの3Rを強力に推し進め、ビュッフェスタイルでは、お皿に取った料理の食べ残しは悪いマナーとし、現在では常識外のことであるがパーティが終わってすぐ、残った料理を別なところに持って行って安い費用で食べられるシステムが当たり前になるような世の中にすべきである。
 料理の使い回しが発覚して料亭が閉鎖に追い込まれたが、食べ残しを使い回しすることは3Rから見ると望ましいことになる。外食産業ではパセリやダイコンのツマなどの使い回しがあるそうで、料亭の使い回し事件が極度に清潔な環境に世の中を引っ張っていくことになってしまうことは困ったことである。
 過大な清潔さが求められるもう1つの例が掛け流し温泉に関わるものであろうか。入浴剤を混入させて自然の温泉にみせかけていたことがきっかけとなって、各地で温泉偽装が判明し大問題になった。このことが掛け流しでないと温泉でないようなムードをつくってしまった。しかし環境を考えてみると,掛け流しは大量の温泉水を使うものである。また温泉の排水の行方を考えると、浴場からの洗い水は処理できるが、掛け流しのお湯は量が多くてとても処理できないので分けてそのまま排水されることになる。しかし掛け流しといっても、浴槽に人が入るのであるから、体や石けんからの汚れは出る。この汚れが直接外に出てしまう。また温泉水にはいろいろな物質が含まれているものが多い。大量のお湯を汲み上げて流すことは環境にとって良くないことである。
 各種の事件でいっそう遠のいてしまったが、3Rにつながるこういうことは何らかの形で進めるべきでないのだろうか。
いろいろな事件が発端となり、清潔の追求によってもったいない社会からどんどん遠ざかってしまうことは避けなければいけない。