逆転の思想-71
              水道公論2008年 10月号


  かなの存在
 今や必須となったパソコン作業。文書作成の入力方法は、ローマ字入力とかな入力とあるが、周りでかな入力をしている人を見ない。かな入力を試みたが著しく時間がかかってしまった。そのうちに日本のパソコンからもかなが消えていくのでないかと思われる。
 パソコンによって大半の人の思考過程が、頭に浮かんだ漢字入り文節をローマ字に変換してキー操作することとなる。入力するのは英数字なので、次第にローマ字が大きな存在になっていくのだろう。
 ローマ字入力もいろいろある。長いことティという字を打つのにテと打った後、iを変換して小さくしていたが、thiと打つと「てぃ」になることと、lとiを打って「ぃ」になることを最近教わった。基礎知識の再教育も必要かもしれない。
 昔和文のタイプ文書作成は漢字入力が大変だった。何千字もあるリストの中から拾い上げて打つので面倒であり、時間もかかった。
 日本語のワープロソフトをつくる時どうするかいろいろ試行錯誤の上、ひらかなを入力して漢字変換するという今のシステムとなった。おかげで非常に速いスピードで文書作成ができる。ローマ字入力とかな漢字変換システムのおかげである。これがスムースに進んだのは「かな」の存在である。
 カタカナは西暦800年頃に、7世紀に発する万葉仮名を革新的に改良、簡素化し、独自の文字として誕生した。万葉仮名は口語に漢字を当てはめたもので、画数は多いし、同じ表音にいくつもの漢字が使われていた。一方ひらかなは西暦900年頃できた。
 文書作成の際、漢字の単語を表すのに、かなを使えることが、かな漢字変換システムの開発につながった。
 中国語では日本のようにローマ字が一般化していなかったのでワープロソフト開発が難しかったようである。ちなみに韓国では字数の少ないハングル入力の方が主となっているらしい。
 毎日パソコンで文書を作っていると漢字をどんどん忘れるのが誰もが抱える悩みである。
 たまに短いメモをつくる時でも簡単な漢字を忘れて苦労する。漢字記憶をどうやって保持させるかが現代の大きな課題である。
 一方、日本語を習おうという外国人にとって何千字もある漢字というのが難関の1つのようである。たださえ文法が難しいのに莫大な数の漢字を覚えないと本が読めない。日本語の普及のため、公用文書などで漢字を数百字に制限することも必要かもしれない。
 国際化のことからいうと外国語にして通じないカタカナ語は法律も含めて規制すべきである。外国語由来のカタカナ語が増えて、英会話に都合が良くなることはいいのであるが、現状では使えないカタカナ語がどんどん増えている。マニフェストは綱領でなく伝票の意味。スキルアップは意味が通じない。カタカナ語普及によって日本人の外国語会話能力が高まり、余計な苦労が増えないようにしていかなければならない。