逆転の思想-63
              水道公論2008年  2月号


  自家療法
 身体の苦痛や様々な症状に対する医学的進歩は素晴らしい。これまで生ものにあたったとされてきた食あたりの相当のものがノロウイルスによるものと分かってきた。ウイルスは非常に小さいし、生体でないと培養できない難しいものなのに遺伝子工学などの研究が進んで、いろいろなことが分かってきたのは素晴らしいことである。
若い頃、よくひどい頭痛にやられ、職場を休んで回りに迷惑をかけた。病院にいっても原因がよく分からなかったが、症状がでるのが希になった頃、新聞記事で偏頭痛とわかった。
 筆者の偏頭痛パターンは、ある日突然視界のなかに大きな光るぎざぎざが登場するのである。そこだけ見にくい。そしてしばらくすると目の奥が痛くなり、その後吐き気がし、ひどい頭痛が数日間と長く続くものである。頭痛は左と右が交替で起こっていた。
 ぎざぎざが表れるのは偏頭痛の典型的な症状らしい。何度も起こしているうちに対処療法を見つけることができた。それは症状が始まってすぐに目を温めることであった。お湯で暖めたタオル、赤外線ヒーターなどを用いたが、頭痛の始まる前にいかに早く措置するかが大事であった。この方法で頭痛にまで至ることが殆どなくなった。目を酷使することが原因らしく、四十半ばになって厳しい作業から離れてから発生が希になった。若いときはいつも枕元近くに電気ヒーターを用意していた。
 暖めるのは、目の疲れを回復する効果があるようで、最近目を温める眼帯が売り出されている。
 現在の常識では、偏頭痛の原因は脳血管周囲の三叉神経が刺激され、ペプチドが放出され、血管が膨張するなどして回りの神経を刺激することによるらしい。これから、目を温めたりすることは血管の拡張につながるので御法度とされている。マグネシウム不足が指摘され、偏頭痛対策の薬もできている。
 しかし、自分の場合、やってはいけないことで頭痛発生の未然防止に成功してきた。偏頭痛に悩まされはじめた頃、現在の医学的見識が普及していたら、目を温めることに到達できず、何回も相当ひどい目に遭っていたと思う。ただ筆者の場合は普通の偏頭痛とは違うのかもしれない。
 頭痛の原因は未だに未解明のところが多いと思われる。インターネットで調べると脳脊髄液の循環不全が偏頭痛の原因などとしているものもある。
 医学も変わる。若い頃何かで女子医大の学生と話をすることがあって、驚いたのは、当時、その大学では母乳は赤ちゃんの生育に良くないと教えられていたことであった。
 医学が万全でない以上、自己責任で常識に反する自家療法をおこなうこともあっていいと考える。