逆転の思想-62
              水道公論2008年 1月号


  長持ち製品
 4隅の丸いテレビ、二槽式洗濯機など、電気製品でも壊れなくてけっこう長持ちするものがある。机の電気スタンドは40年近く使っている。ほかに長持ちしているのがニコンの双眼鏡。30年前、職場の送別記念品としてもらったもので、軽くて、明るく、重宝している。
 一方、最近の電気製品はやたらに小さな制御機器が入っていて、こちらが先にやられるようで、機械部分はしっかりしているのに動かなくなってしまい、長持ちしないものが多い。
 長持ちしてありがたかったのは段ボール製のファイリングキャビネットであった。通常のスチールキャビネットは中身がなくても重くて持てないが、段ボールだと重さが桁違いに軽くなる。
 35年も前に買ったもので、A4版で奥行きが60cmあり、5段2列で使っていた。少し強度を上げたタイプで、各横壁に2列の補強金具を付け、金属の金具で段ごとに連結して強度を保持するようになっていた。収容能力が大きく、本や書類だけでなく近年は釣り道具まで入っていた。10回以上の引っ越し、また2回の大地震にも耐えてきた。これが一番良かったのは、中身を段ボールに詰め替えないで一箱づつ運べたことである。引っ越しの段ボール箱のように軽いので運ぶのも楽である。これによって小さい家での引っ越しの際、家具の中身を段ボール箱に入れると足の踏み場もなくなるくらい部屋がいっぱいになってしまうことが軽減された。。
 このダンボールキャビネットも、さすが何十年も経つと、曲がってきたり、破れたりで、代わりの棚を探してきた。組み立て棚や、多く売られているプラスチックのケースなど探したがなかなかいいものが見つからなかった。
 たまたまインターネットで探したら驚いたことに同じものがあった。家具、事務用品などの売り場にもなかったし、事務機器のカタログでも見た覚えがなかったので、まさか何十年前と同じものがまだあるとは思っていなかった。
 メーカーは昔と同じゼネラルという名前であった。商品は変わっていないが会社の業務は、類似の事務用品を扱っていないなど相当変わっている感じがした。段ボールキャビネットだけは変わらずに扱っているということは、これが優秀な商品で、需要がずっとあることなのだろう。
 もう引っ越しはあまりないだろうと考え、補強金具と連結金具が前側だけの簡素化された棚を通販会社に申し込んで送ってもらい、組み立てた。送られてきたものは折りたたまれた状態で、値段もスチール製より一桁安かった。
 購入して何十年後になっても、材質も昔のままのように見え、このことは段ボールがいかに優れた素材であることを示している。
 元のキャビネットはばらして、段ボールと鉄くずになり、リサイクル可能で処分も楽であった。
こういう商品がたくさんあると楽しい。