逆転の思想-58
              水道公論2007年 8月号


  リゾート法のこれまで
 2008年に日本で行われる主要国首脳会議(サミット)の首脳会合を北海道洞爺湖町で開催することが決まった。開催の場所はザ・ウインザーホテル洞爺とされる。ここはリゾート法関連事業の悲劇の場所の一つであった。今年はそのリゾート法ができて20年になる。総合保養地域整備法という名の法律の下、全国各地でリゾートの構想がたてられた。総数は42カ所にのぼる。リゾート開発ブームの中で目立ったのが、宮崎のシーガイア、北海道のアルファリゾート等巨額の赤字背負い込んでしまった開発である。ただでさえ、レジャー観光施設は運営が難しい。
 リゾート開発構想がたてられたとき、猫も杓子も参加しないと取り残されるという怖さがあった。
 リゾート法で最後に承認されたのは北海道ニセコ・羊蹄・洞爺湖周辺リゾート地域で1998年の1月である。すでに拓殖銀行は1997年11月に破綻していた。こういう状況で承認されているということは、計画の承認手続きが複雑かつ大がかりすぎるため、相当前に作られた構想を変えることができないで、その構想にひっぱられて各種事業が進んでしまったことを推定させられる。破綻の象徴のようなエイペックスリゾート洞爺は、同じ1998年に倒産し、ザ・ウインザーホテルとして2002年から再生をはじめた。苦労して再生が成功したおかげで2008年のサミット会場になる機会が与えられるようになった。
 ニセコやアルファリゾートトマムでも破産があった。現在リゾート施設が稼働しているのが救いだが、多額の債務が返済されないで消えてしまった。結局、この膨大な損失の穴埋めのため、預金利子分の搾取と税金につけがまわっているような気がする。
 リゾート法による開発で結局多くの地域がひどい目を見たが、法律が悪いとも言えない。リゾートを持ち上げて大規模開発をはやすなど音頭取りをした人々が一番の問題であるが、バブル時期のことであり、結局、悪いのはそれにのせられた方ということになってしまう。当時の金余りで、リゾート法による優良リゾートがなかったら、乱開発がもっと進んでいたいうこともある。
 リゾートプロジェクトで成果を上げているといわれる施設を見るとリゾート法に関係しないような創意工夫でがんばっているところが多い。現在リゾート法制度がどれくらい生きているのだろう。法律の中身を見ると、県による基本構想作成、国による承認、交付税の措置、農地や国有林野の活用、税法の特典などがある。ただ制度が消えても誰も困らない気がする。一番やらなければいけないのは基本構想の承認など手続きが大がかりで、多数の人手を必要とし、柔軟でない仕組みを持つ制度の整理であろう。
 法律の運用には大きな人手がかかる。法に基づく基本構想の承認や見直しはもっと煩雑な作業になる。しかし日本では法律とは作るときは脚光をあびて大騒ぎするが必要なくなって整理しなければならなくてもほっておかれる傾向が強い。社会に全く使われていない法律がけっこうある。進化の過程で使われなくなったDNAのように塩漬けになってしまうだけならいいが、手がかかる。また思わぬところで悪さをするかもしれない。このつけは誰が負うのだろう。