逆転の思想-57
              水道公論2007年 7月号


  ミルクとフレッシュ
 フレッシュとは喫茶店で出される小さいプラスチックケース(ポーションという)に入ったクリームのようなもので和製英語らしい。
 喫茶店に行ったときは、どちらかといえば紅茶やココアを頼むことが多い。紅茶は牛乳を入れるのが好きである。コーヒーはなぜか味がよく分からない。ただし高級なものはおいしいと思う。
 これまで多くの喫茶店でミルクテイーがあるので頼むとミルクの代わりにフレッシュを出されて、何百円を出してもこれしかないということが多かった。紅茶派の多くの人が不満に思いつつ我慢してきているようである。
 フレッシュはコーヒーに、こくをあたえるとして喫茶店で使われている。その容量は3〜5ccくらい。植物油に水を混ぜて乳化剤などの添加物で白く濁らせ、クリーム風に仕立てたものがほとんどである。一個1円ちょっとくらいで、乳脂肪入りの高級なものは1個6円くらいで存在する。このフレッシュというのは日本独特のもののようである。
 マーガリンと同じと考えればいいが、マーガリンの味がまあまあなのにフレッシュを紅茶に入れるとまずいのは、生クリーム代用の性格からだろうか。脱脂粉乳の方がずっといい。調べてみるとコーヒー党でもフレッシュに対する不満の議論があるようである。
 英国航空などの国際便でもポーション入りのミルクが出されていた。成分はともかく、牛乳の感じがし、紅茶に入れてまずまずの味であった。記念にもって帰った容器3個を見たら、産地は英国、オーストラリア、不明、容量は15cc程度、一つにはスキムミルクと非乳脂肪と書いてあった。
 外国から来たようなあたらしい喫茶店が街角に次々に店を出し、にぎわっている。ドトール、スターバックス、ベローチェなど安くておいしいコーヒーといわれている。
 一軒の店でメニューにあったミルクテイーを注文したら、フレッシュがついてきた。これはミルクでないといったら、ミルクを入れるのはロイヤルミルクテイーだけで、そっちを注文してくださいといわれた。結局、特別に牛乳を入れてもらったが、新しいタイプのこういう店でもミルクがフレッシュとされているところがある。牛乳は1リットル200円くらいであるから、5ccでは1円であり、コスト的にもサービスしていいと思われるが。
 一方、少し値段の高い店では客が自由に使えるよう牛乳と低脂肪乳が置いてあった。
 こういう例外はあるものの、ともかく日本では、ミルクといいながら合成品だけを使うことが平気で行われているようである。物資の乏しかった時代のものがそのまま生きている感じもする。牛乳が余っているというのに。牛乳も選択肢に入れるようにしてほしい。またミルクでないものにミルクという名前を付けるのはおかしい。味や品質にうるさいといわれる日本人であるが、こういうことについてみるとけっこう遅れているように感ずる。