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最近の風潮としてある1つの単純なものさしだけで物事を見ておかしいことを追求し、責任者を罷免して一丁上がりというのが多いようである。 高速道路批判に代表されるように単に事業の収益が上がらないとして叩く。地方都市の地下鉄も経営が悪いとして批判が多い。東京、大阪のように地下鉄がインフレ前の昔からあって償還額も減っているところは別として、京都市など最近建設した都市では地下鉄事業の財政が苦しい。 地下鉄の事業モデルを考える。1km建設するのに、3〜400億円かかるといわれている。400億円として国庫補助・地方公共団体負担300億円であると事業者の負担は100億円。この元利返済に年5.3億円くらいかかる。また事業運営に年6億円は必要。周辺人口が1万人とするとして、運賃を相場の200円くらいで売り上げは年8億円くらいであろう。これでは元利償還に回らない。この結果地下鉄事業運営が苦しいことになる。住民一人あたりの建設費が400万円くらいになるのであるから公共団体の財政負担も大きくなる。 しかし実際はいろいろな面についてもっと広く考えなければならない。 沿線土地の価値の上昇がある。沿線の資産価値の上昇を平均1u3万円とし、1kmまで及び、公有地の割合を2割とすると、資産価値の増加は480億円にもなる。多く見積もりすぎていることはないと考える。固定資産税が相場の年1.5%とすると7.2億円増収になる。ただ1.5%は事業所税や所得税に比較すると低すぎると思われる。4.5%にすれば21.6億円増収。こうなると公共負担分は14年で元が取れる。 大体、市街地の地価が高いのは様々な公共投資などによって土地の利用価値が増し、様々なお金を産めるようになっているからである。公共投資による地価の値上がりで莫大な利益が土地所有者にそのまま行ってしまうことがおかしいことなのである。 一方、運賃を300円にすると売り上げが12億円になり、元利償還が可能になる。しかし公共料金は並びの概念が強く他都市で200円くらいだと値上げは非常に難しい。とても文明国とは思えない非人道的な混雑を当然とする東京の地下鉄の安い運賃と比べるのはおかしい気がする。 地下鉄にはこのほかいろいろなメリットがある。出張や観光で大都市に行く場合、階段の上り下りはあるものの、時間が確実で、速い地下鉄は非常にありがたいものである。 観光客が多い都市であれば、使用回数の多い利用者向けのカードで割引率を数十%にするなど地元利用者の負担を軽減する方法もある。 公共事業の大きな問題点は、事業によってもたらされる地価の上昇による巨額の利益がそのまま土地所有者に行ってしまう制度によるものが多いと考える。戦後、我が国の土地政策があまりにも私的財産擁護に過ぎて様々なひずみを起こしてきた。 社会全体としては大きなメリットがあるのに、負担が公平でないためにどこかに大きなしわ寄せがいくことは改善していかないといけない。 |