逆転の思想-49
                水道公論2006年 10月号


  デジカメの事業展開

 ここ数年、水辺の写真撮りを続けている。これまで国内だけであったが、昨年から欧州の有名な都市の水辺景勝地にも出かけるようになった。欧州各地やアメリカから観光客が多数訪れていて、見ていると日本人だけでなく多くの人がカメラかビデオを持っていてスナップや景色を撮影している。デジカメも多い。
 感心するのが大半がソニー、キャノン、ニコンなど日本メーカーのものであることである。旅行に持っていくと言うことは、それだけ存在価値が高いということであり、よくぞこれだけ日本メーカーの製品が評価され、普及しているという感じで誇りに思うものである。
 残念なことは、これだけ世界の人に受け入れられているのに、事業運営として非常に厳しいことになっていることである。競争が激しすぎるのであろう。一般向けの一眼レフデジカメは最近売り出されたばかりであるが、銀塩時代の交換レンズが使え、ぶれ防止などの機構を備え、デジカメの特徴である撮影したばかりの写真がすぐ印刷できるだけでなく、画像の補整もできる便利なものである。この一眼レフデジカメがもう10万円くらいで買える世界は、パソコンやハイビジョンテレビのこれまでと比較すると大変安いと思える。競争が激しくて利益が上がらないため、良いデジカメを出している老舗が事業を廃止してしまったり、残念である。欧州の服飾品ブランドが悠々とやっていることと極端に違う。欧米流でデジカメの事業展開が進んでいたら、技術の進歩は約半分、一眼レフデジカメなどは3倍の値段でも消費者に歓迎されていただろうと想像する。
 デジカメで一眼レフのメーカーが今度一つ増えて国内8社というのは乱立の感がある。銀塩式一眼レフでは10社くらいであったが、生産技術の底辺はそれほど広くないため、開発コストはそれほどかからず、また機械的な機構が多く、各社製品の特色が出せていて、メーカーが多くても成り立っていたのでないかと考えられる。
 デジカメは受光器などハードの技術開発もあるし、映像化のソフト開発も莫大なコストを必要とし、広大な先端技術の上に成り立っている。時としてある、ソフトのバージョンアップのやりかたなど見ると、パソコンがまるまる1つ入っている感じがする。しかし、国内主要メーカーがデジカメで20社、一眼レフデジカメで8社もある。
 次世代DVDの規格をめぐって相対立するグループが勝手に新製品を売り出し、消費者を蚊帳の外に置いていることほどひどくはないが。
 オペレーションソフトによって機能が規格化され、部品の組み立てが主となり、独自の機能などが打ち出せなくなってメーカーの存在価値が乏しくなっているパソコンとは少し違うと思われるが、デジカメ事業の安定運営ができるように願うものである。