逆転の思想-47
                水道公論2006年 8月号


  名称の重要性

 羽田空港が拡張される前、モノレール終点の羽田空港の1つ前に羽田整備場という駅があった。現在は整備場という名前に変わっていて、空港駅までいくつも駅ができている。
 この整備場の前に付いた羽田の名称が多くの人に誤解を生じたと思われる。電車やバスにはじめて乗る人は駅の名称が頼りで、気にしていなければならない。だいたい車内アナウンスは自国語でも聞き取りにくいことが多い。羽田と放送されると降りなければいけないと思ってしまう。特に日本語のわからない人は羽田空港と羽田整備場との違いが分からない。しかも整備場の目の前は空港が広がっている。放送や羽田のローマ字を見たりして、けっこうの数の人が整備場で降りてしまったことと思われる。名前を現在のように変えれば良かったのであるが手続きができなかったのか長い間変わらなかった。
 その結果、整備場駅には「空港は次です」という英語の看板がホームのあちこちにあった。それが駅の改修の際に一時なくなったりして、また被害者がでていたと思われる。
 バス停でよく入り口という名称がある。駅、公園、競技場などに関連するバス停で、この場合本施設前に次のバス停があるのが普通であるが、入り口だけしかバス停がない場合がある。初めての人は降りるべきかどうか悩んでしまう。
 平成の大合併で新たに多くの自治体が誕生している。その名称を決めるのも大変なようである。かずかずのもめ事が伝えられるし、議論の結果、ありきたりな名前になる場合も多い。決め方として公募する場合と、誰かが決める場合がある。公募すると平均的な名前になりがちとなる。公募でなく、誰かに名付け親になってもらう方法がけっこういいことがあるが、自治体では難しいと思われる。
すっかり名前が定着している地下鉄大江戸線も、名称を公募して、確か東京環状線、ゆめもぐら、という名前が選ばれたところ、新知事から異論が出て、大江戸線になったというような記憶がある。今では山手線と間違える可能性のある環状線という名前より大江戸線の方が良い感じがする。
 大会社とか官庁で肩書きが非常に長くなる例がある。いろいろな書類に肩書きを書かなければいけない社員も大変だし、同窓会などの名簿づくりもその分だけ表計算の行幅を広げなければいけなくなり、悪い印象を与えることになる。
組織名称で所管する業務が2つある場合おうおうに両方の名前を並べることが多い。上下水道が非常に多いが、県に公園下水道課という名称もある。下水道の場合、下に置かれるのに慣れてしまっているが、場合によって下に書かれた業務に関連する客先などから不満が出ることもある。
 以上名前のつけ方にまつわる話は多い。
 名前は、正確に情報を伝えるようにまた見る人を誤らせることがないようによく考えて設定する必要がある。