逆転の思想-45-
                水道公論2006年 6月号


 審査業務の責任範囲
 建築設計偽装問題で建築確認をパスしたのにどういうチェックをしているのかと問題になっている。
  建築確認は建築基準法六条に規定されている。その趣旨は、「建物を建てる場合、工事着手前に、建築基準関係規定に適合するものであることについて、建築主が確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。」というものである。
 これを素直に見ると、審査する側がしっかり確認しなければいけないことになる。
 ただその背景をみると複雑のようである。先ず、確認という言葉のことがある。法令上では通常、許可、承認などが使われている。
国では緊急調査委員会を立ち上げた。このたび報告書が公開され、提言とともに背景なども説明されている。確認という珍しい言葉が使われたのは、建築規制をできるだけ簡素化しておき、資格を持ち、設計をまかされる建築士、独立した権能を持つ建築主事等の関係者が品質確保を担うべきというような背景があったとされる。
 建築確認制度では、それほど詳細な審査は行われず、また建築確認の判定ミスがあった場合、審査機関の全面的な責任がないように運用されてきた。
 多くの法令で、許可、承認の規定があるが、おおむねそのようなものであろう。大規模な回収が行われている欠陥ストーブも、いろいろな基準をクリアしたマークが貼ってあるだろうが、政府の責任は問題になっていない。
 現実に、公共のチェックシステムで、抜けがあった場合に、チェック者に大きな責任がかかるようであると、大変な作業をしなければならなくなる。
 しかし現実には建築確認が下りているから問題ありませんよと、売り手のお墨付きにされてしまっていた。しかも建築確認の条文を素直に見るとおかしいとは言えない。
 最近、企業の粉飾決算に際して、会計監査法人の責任が大きく考えられるようになって、企業と一緒に多額の負担をさせられる状況になっている。
 このように、審査する側の責任が重大になっている。
 今の世の中は、仕組みが分かりやすくなくてはならず、また権限と責任が連動するようになりつつある。製造物責任のように、社会行動の責任がはっきり規定されるようになっている。
 建築確認制度も権限と責任の範囲が説明されなければならない。建築確認は、建築制限などまちづくりの観点、構造物の安全性、火災に対する安全性など現時点では非常に広い範囲の審査項目があって、しっかりとしたチェックには膨大な手数がかかり、範囲を絞らなくてはいけない。今回の報告書では建築主事はまちづくりの観点に絞って審査するというような提案がされている。
 建築確認制度の責任範囲が良く理解されるようになると、製造販売の信用評価制度、性能保証の確立などが進み、マンション事業がより公正に行われる状況になると考えられる。
 行政制度も、認可、承認などの権限と責任の範囲を世に分かりやすくしていくことが必要である。