逆転の思想-41-
                水道公論2006年 2月号


 計算ソフトの改善
 偽装設計と呼ばれる、構造計算で設計を改ざんされたマンションやホテルが多数あることが判明し、大きな問題となっている。意図的に設計をごまかすことはこれまでの概念にない世界で、偽装設計という言葉も実態を的確に表していないようで、はっきりしていない。
 建築確認の手続きが行われているが、民間認証会社、公共団体の専門家の誰もが偽装設計を発見できなかった。
 ここで、構造的ないくつかの問題が浮かび上がってきている。計算ソフトのチェックシステムのこと、分業システムの責任体制、競争社会での検査体制のこと、設計会社の主体性のことなどがある。
 設計、積算作業など作業合理化のために様々な計算ソフトが導入されている。便利になった反面、これまで手計算では計算途中の数字や感覚で分かった単純なミスが修正されないまま、結果として打ち出されることが多い。工事積算で、単位を間違えて2桁、3桁も間違えた入力をしてそのまま気づかないで会計検査で指摘されている例も多いようである。
 昔、積算ソフトの導入時点では手計算でチェックして確認するようなことも行われていた。慣れてしまうと面倒な、そういうことは行われない。
 筆者は積算について、これまで概算チェックシステムの重要性を言ってきた。
 コンクリート打設量と鉄筋重量や型枠面積の比、資材費と取り付け費の比など、別の次元から大まかなチェックをして設計積算の桁違いなどのチェックができる。しかもプログラムさえ作っておけば自動的に出てくる。これこそコンピュータ化の大きなメリットである。
 建築物の構造計算でどういうチェックシステムを導入しているか分からないが、マンションなどの構造計算のチェックの際、階数、床面積など内容がはっきり分かる諸元から、柱面積、使用鉄筋量などの比を計算させて打ち出しするなどのことをしていれば大きな誤りはチェックできるはず。ただこれらのチェックはささいなことは見抜けない。
 また計算された数値の意味を吟味できるよう、過去の計算結果とのグラフィックを使った見やすい比較というものも重要である。 
 概数チェックのような別な観点からのチェックがないと、チェックは設計時点と同じ手間をかけてやることになり、手順を追ってチェックしていると、往々にしてミスも引き継いでしまうことにもなる。
 コンピュータ化の欠点として作業がブラックボックスに入ってしまい、手作業のときの人間的な感覚によるチェックが抜けてしまうことがずっと言われてきている。
 便利になったコンピュータ計算ソフトに、人の感覚や経験者の勘など様々なチェック機能を強化して、安心して使えるようにすべきである。