逆転の思想-40-
                水道公論2006年 1月号


 いまこそ地方分散を
 ITの発達による情報革命は、三次産業の地方分散、卸売り市場の縮小など、社会構造を速やかに変えつつある。これにより、これまでずっと続いてきた大都市の成長を考えなおさなければいけない状況になっている。少子高齢化により、今後人口減が見込まれる中で都市はどうなっていくだろうか、またどうあるべきか。 
 一方で、教育、文化の点については依然として大都市有利の状況は続くと思われる。また情報化の進展は、新しい、より専門的な職業を生み出し、これで生計を立てていく上では大都市で活動しないと難しい面がある。工場の移転による都心跡地の大規模マンション建設など、住みやすくなる方向も見える。
 ただこれまでのように大都市に仕方なく住むということはなくなると思われる。
 今後我が国の人口は減少していき、都市が、どのようになっていくかであるが、現時点の人口減少県でも都市部の人口は増えており、影響を強く受けるのは周辺部の農山漁村圏である。
 大都市への人口集中を避けるための方策はこれまでいろいろ実施されてきた。しかし大都市への求心力に対抗できるものはなかった。この結果総人口の過半が大都市圏に集中し、地方の過疎化、高齢化が一層深刻になっている。一方大震災のことを考えると、危険分散は非常に重要なことである。三大都市圏に人口が過剰に集中して、いざという場合被害が大きすぎるだけでなく、復旧も非常に困難になる。
 時間が大変貴重になっている現在、長い通勤時間は、座れるなどして効率的に使えるならともかく、なにもできない過密な満員電車はますます嫌われる存在になる。幹線道路の混雑も、地方分散によって楽になる。
 ITの発達で大都市の有利性が少なくなりつつあるいま、強力な地方分散策を実施すべきである。大都市部の人口吸引力が相対的に弱くなっている今が適切ともいえる。
 地方分散は、兼業農家による農業生産の確保を図ることができる可能性を持つ。
 情報化社会は地方部での雇用増加の可能性を高めるものである。これから地方で農地の面倒を見ながら、働きたいという希望が満たされるようになる。また、国の安全性確保の上から食料自給率の確保は非常に重要である。地方部で、兼業農家が安心して自活できるようにするシステム作りが重要な手段となる。
 地方に移住する場合、就職のほか、子供の教育、高齢者は医療が心配のもととなる。地方部でも満足できるサービスが受けられるよう、医療改革、教育改革も重要である。情報化によって変わりつつある社会構造に一工夫して、地方分散を推進すべきと考える。