逆転の思想-39-
                水道公論2005年 12月号


 都市と情報
 都市は数千年前に、仕事の分業化と貨幣による市場経済の成立、また国家や部族など大きな社会集団の形成に伴い成長を始めた。人が集うことによる情報の集中は生産性の向上につながり、文化や科学技術の進歩をもたらした。都市が情報を入手でき、活用される場所として成立したことになる。
 国家の形成とともに都市は商工業だけでなく、行政の中心となり、その規模も大きくなっていった。大きな集団ほど強大になり、小さい集団を飲み込んでいった。
しかし衛生環境が悪いヨーロッパ諸都市では伝染病に頻繁に襲われ、大都市の成長はできなかった。
 産業革命の時代に入り、衛生、医学の進歩や鉄道など交通手段の発達によりロンドンのような大都市の成立が可能になった。大都市では、構成する様々な社会活動が、もっと有利な場所を求めて競争するようになる。優先度が低いものは大都市の外に移転するようになる。
 手工業が主であった時代は工場は都市の中に商業とともにあった。しかし重工業など工業化の進展に伴い、各地の工場団地に見られるように、現代では生産工場は都市から離れたところに立地するようになった。生産に必要な情報は都市部の本社などから得ることができるので地価の高い都市部からはみ出したのである。
 大都市の膨張は、先進国だけでなく、発展途上国でも起き、人口1000万人以上の大都市が生まれ、膨張している。一方で、交通マヒ、水域の汚濁、廃棄物問題など、健全な都市にするために莫大な費用が今後必要になる。道路などの交通社会インフラから考えると多数の小都市の方が経済的である。
 このように大都市は情報が集積し、仕事など様々な社会活動のできる場所として巨大化を続けてきた。
 ところが高度情報化が進んできた現在、地方でも情報の収集・伝達が容易になりつつある。インターネットの活用により、出かけなくても瞬時にあらゆる情報が容易に入ってくる。文書だけでなく、画像も同時に送ることができる。専門性の高い商品も、専門店に出かけなくても検索して購入できるようになってきている。
 また情報化の進展は、印刷業務、計算業務、電話応答サービス業務など情報産業の大きな部分をも地方部で実施可能にさせた。また職場に居なくても自宅で仕事ができる職場の分散も可能になりつつある。
 どこでも高度な情報が得られ、情報産業自体も大都市にいなくていいような状況にしてしまう情報革命は、今後、都市構造に大幅な変革を生ずるようになると考える。