逆転の思想-37-
                水道公論2005年 10月号


 数字の価値
 数字にだまされるなという言葉をよく聞く。しかし数字は物事を客観的に、かつ関連付けして見るのにいい指標である。物事の形容で、「こんなに高濃度」と言われた場合に、何と比較しているのかわからない。100mg/lなどの数字であれば、他の標準的な数値と比較できるし、様々な計算もできるし、その根拠の追跡も出来る。数字の精度を探るのも大事である。大まかな推計値から別の大まかな推計値を引き算した数値などいいかげんになってしまう。
 日経ビジネスで、夏に定期的に法人所得(帝国データバンクがとりまとめ)のランキングが出されている。連結納税制度を適用してまだ公示が出ていない企業もあるので、その分割り引いて考えなくてはいけないが、おおまかな理解はできる。
 2005年版(2004年度)を見てみる。一番はトヨタ自動車で6年連続での9228億円である。2位が日本銀行(昨年85位)で4803億円。昨年第2位の4370億円であったNTTドコモはいなくなってしまった。
 上位50社といえばそうそうたる企業であるが、目につくのが、このなかに消費者金融会社が4社も入っていてその所得合計が3881億円もあるということである。前年は4072億円で少し減ってはいるが。ランキング上位50社についてみると消費者金融会社はここ数年、5千億円の申告所得をしてきている。自動車会社の3社で1.3兆円、電力会社の5社で1.2兆円には及ばないが、医薬品会社48百億(3社)に匹敵する。
 消費者金融の利益はローンの利子からもたらさられるもので、テレビのコマーシャルやテイッシュぺーパー配りなどの宣伝費用も含めて、貯蓄の少ない人々から多額のお金が流れ出していることになる。アメリカのように資産階層が上下にますます離れていく傾向を感ずる。貯金に利息が付かない低金利の一方で、高利率のお金がこれだけ借りられていることは不思議なことである。お金の動きが不自然になっている。大手銀行などがこの方面に事業展開を図りはじめているようである。
 我が国の雇用者53百万人のうち、パート雇用が年々増加して、1000万人を超えてきていることも所得の階層分化を示しているように見える。
 一方で銀行を見ると、128位に静岡銀行317億円と、収益が回復しているとされるメガバンクは掲載されていない。ただ大手3行の当期利益を調べて合計すると5千億円程度となる。こういうデータの抜けもチェックする必要がある。また持ち株会社などは子会社も含めて見なければ事業内容が分からないなど、いろいろな数字が存在する複雑さも考えなければいけない。
 数字があるとそれをもとにいろいろな比較、考慮、推計ができる。情報がはんらんする時代にあっていかに数字の意味と価値を見いだして活かしていくかが重要なことになる。