逆転の思想-32-
                水道公論2005年 5月号


 災害時の支援体制

 中越震災では各事業とも全国的な支援体制が組まれ、早期復旧に大きな効果があった。水道事業や、ガス事業は支援部隊が全国からすぐに駆けつけ、しっかり活躍したそうである。
 下水道事業もすぐに全国から支援の手が差し伸べられ、大雪の前、ごく短期間のうちに必要なことが実施された。ただ、支援の実施で少し難しい面があったようである。現地の問題などいろいろな要素があると思うが、事業管理の体制から発しているものがあるようで気になるものである。
 それは調査設計から維持管理に至るまで民間委託が進んでいることに発していると思われる。
 被災調査や応急復旧には経験ある現場作業員と機材が必須である。被災地域の民間企業担当者は手一杯となり、被災調査などに対応できない。全国展開している企業であれば、各地から応援を頼めるが、地域で活動している企業はそれが難しい。また支援する公共団体が、事業体制のしっかりしている政令指定都市でない場合、担当職員のみを派遣しても、現場業務に慣れていなくて、マンホールを開けるのも大変ということではないだろうか。
 公共団体の場合は、自分の時に助けてもらえるから応援に行きやすいが、民間企業では日頃仕事どころか接触のない地域に作業員をボランティアで動員するには相当の努力が必要になる。被災した復旧の責任は事業管理者が負うことであり、企業にとって自分の受託業務区域が被災したときに助けてもらえるから支援するということが言いにくく、公共団体から支援の要請がないと支援しにくい。また、あとで仕事を受注できることも少ない。
 したがって、災害時の体制確保のために、民間委託にも、非常時のことまで考えておくことが必要である。現在、現場業務を行っている民間会社の広域的な組織が作られているが、これを強化する。さらに、地域単位で活動している企業の多い業界のことを考え、他地域から被災地域へ支援に出動した場合の、民間の支援業務について、少なくとも作業実費を支払う等の規定を全国的な災害支援ルールに入れておくことや、公共団体とその地域の民間企業との間で、被災地域に一体となって支援にいくような協定をしておく、などのことが必要になる。
 公共団体側での作業指揮をとれる人材確保も重要である。