逆転の思想-29-
                水道公論2005年 2月号


 課税対象の柔軟化

 今年の国の借金が729兆円になるそうである。地方の借金が200兆円と言われ、合わせて1000兆円に迫ろうとしている。経済見通しの大きな重しとなり、1400兆円の貯金を、だいなしにしかねない大きな危険性を持っている。これに米国の赤字と円高防止のためドルを買い続けている外国為替の問題がある。政府保有の米国債は40兆円あるらしい。微妙なバランスの上にあって、これが崩れると世の中が悪い方へ大きく変化するおそれを感ずる。
 また年金、医療など高齢化がすすむと否応なしに支出は増えていく。公共の支出抑制と税収の増加が大きな課題となっている。消費税率アップなど検討されており、他国に比べると相当低いが、強制的な税徴収で抵抗が大きい。
 ここで額は小さくても、払わなくても生活できる税収を積み上げていくことが求められる。物事が急速に変わっていく現在、税収体制も時代の変化に合わせていかなければならない。
 その一つが酒税である。デフレで懇親の場の飲み代が安くなっている。居酒屋は昔は5千円程度だったが今は3千円くらいになっている。一方で、どんどん増えている生活習慣病のことがある。高血圧、糖尿症など、飲酒量が原因とされ、酒を飲み過ぎないようにすることが処方になっているものが多い。社会負担が増える一方の医療費であるので、できるだけ減らし、国の収入を上げる酒税はもっと上げてもいいのでは。特に急増している発泡酒などは安すぎる。同じうまさのビールで原料だけが違うため、税率が違うのはおかしいと思う。たばこも含めて、高齢化社会にあって、できるだけ節制して健康を保持してもらう方向へ働く税制は重要であると考える。
 もう1つメールの課税がある。メールは通信手段としてどんどん増えている。はがき50円とくらべて只に近いコストの上、投函や宛名書きが不要。新しい通信手段で、まだそれほど浸透していないから、税金付加によって、それほどの混乱は起こさない。手紙や電話のことを思えば本来1通10円程度でもいいと思われる。逆にメールがあまりにも安いので、多数の広告宣伝や何も知らない人を狙う悪徳な詐欺に使われている。宣伝の多数のメールがあまりに多いので、友人からのメールを見落としてしまうこともある。
 フィリピンでメールに徴税しようとして反対され、引っ込めてしまったことは非常に残念なことである。
 税制も、世の中の動きを見ながら臨機応変に制度改善していく必要がある。