逆転の思想-23-
                水道公論2004年 8月号


 チェック体制の課題

 大規模な産廃不法投棄が各地で見つかり、地元では深刻な問題となり、監督部局も十分に見ていなかったと非難の対象になっている。ただ現在の行政側のチェック制度や体制の基本には様々な問題があるように思われる。
 我が国の公的な審査は表面上非常に厳しく、種類が多いように見える。しかし、一般に書類審査だけなど形式的であるため、基準がはっきりしない行政指導などによりしっかり指導されるが、一度合格してしまえばあとは目が届きにくなる検査が多いようである。
 これには審査体制の問題がある。審査組織は通常弱体であるため、どうしても多数の書類を出してもらって、十分確認できるかどうか分からないような書類審査だけの傾向にある。
 事業の許認可のチェックは、実際どう運営しているかが重要であるが、一般に審査体制が弱いため、現場に行けないのであろう。定期的な報告が求められるが、書類だけでは難しい面がある。
 こういう審査体制は、そもそも申請者が正直で善であるという協調社会からの流れであると考える。競争社会へ変化しつつある我が国では、業務の評価が大事であり、審査体制の強化が必須であるが、対応できていない。インターネット入札がもてはやされるが、成果の評価や検査体制はどう対応しているのだろう。
 金融機関などを審査するため、毎年100人もの金融庁の増員が続いているそうであるが、行政改革で定数が減らされている一般の行政機関からみると信じられない世界である。銀行、金融機関など、運営に社会的信用が不可欠な組織をチェックするのは、一般競争入札などから見ればはるかに審査がしやすいのでないか。競争社会では検査体制が適正に運営されていないとめちゃめちゃなことになるので、本来、皆こうしなければいけないのであるが。強い機関は審査の体制強化ができるが、一般にはとてもできそうもない。
 弱い審査体制で問題が起こった場合、審査体制の問題解明より、これまでのチェックシステムでは不十分だったのではないかということになり、新たなチェック体制が整備されることが多い。新たな体制といっても十分な検査はできないから、制度が複雑になるだけで効果はあまり変わらない。チェック組織がしっかりしていない場合、相手先に行かないで、詳細な調書が要求される。様式を作るのはいいが、記入するのが大変な作業となる。いろいろな機関に対して同種で中身の違う書類を山ほど作ることになる。まじめな者ほどきちんと記載することになり、負担が大きくなる。
 やはり現場の確認などしっかりチェックする必要がある。審査・検査制度は少なく、ただ見逃しがないようにすることが大事であると思う。競争社会では確実な評価・検査体制が不可欠であり、協調社会の効率的な体制のまま競争社会に移行するのは虫が良すぎると考える。