逆転の思想-20-
                水道公論2004年 5月号


 規定の柔軟化

 独立行政法人の方に制度が変わって何が良かったかと伺うと、典型的な例として外国出張の手続きが楽になって助かっているという話が多い。官庁の時は外国出張には組織の長の承認が必要で、正式承認を得ないと出張に伴う様々な準備が進められない一方、組織の長は会議や出張が多く、なかなかつかまらないので大変だったそうである。世の中が変わり国際的なコミュニケーションの頻度が高くなり、また沖縄に行くのとあまり変わらない出張経費になっている現在、官庁組織でも外国出張の承認システムを簡素化していれば勤務の効率化が図れると思うが。
 これに関連して最近ある官庁でパソコンを別な予算で購入したとして土木関係職員が処分を受けたことが思い起こされる。パソコンを購入するには備品購入費の費目の予算で行わなければならないが、備品購入費予算がなくて請求しても無理だろうと判断し、平成11年から15年まで、一般需用費などの経費で購入したことが不正購入とされ処分されたものであるとのこと。新聞記事しか情報がなかったのであやふやであるが自分の経験から経過を考え、事情を推測してみる。
 パソコンで困ることが多かったのはその法定耐用年数の長さである。パソコンは最近まで2年もすると使い物にならなくなっていた。ところが法定の耐用年数は今は4年であるが、13年4月までは6年であった。つまり、最新のものでも2年使用したあとの4年間は非常に使いづらい存在になってしまっていた。減価償却も働き盛りの時に十分できなくて、眠っているときに償却コストがかかる。備品という概念で考えると、購入したときの機能は保持されているのだから、価値がなくなると言いにくい点はある。でも実態には役に立たなくなっているのだから耐用年数は短くなければならない。官庁購入品は安い価格ということで少し型が古くなったものが多いので陳腐化がもっと早い傾向になる。
 規定上は立派な備品と扱われるから新たに調達すると一人一台以上の数になってしまう。一人一台以上の説明を事務的にするのは非常に難しい。土木の仕事は合理化のため積算などコンピュータ化が進んでいて、古い機種ではソフトも入らない、つまり仕事ができない状況になってしまう。
 お金も効率的に執行するため費目間の流用が柔軟になっていなければいけない。仕事は出来ないし、購入はできないしというような事情でなかったかと推測する。耐用年数の規定が実態にあっていて、仕事をする人が効率的に作業できるように一番使いたいお金が使えるようになっていれば良かったのにと考える。
 官庁業務の効率化で大なたを振り回す向きが多いが、実際は現場の仕事の効率化を考えた規定の柔軟化など、小さいことの積み上げも重要であると考える。