逆転の思想-17-
                水道公論2004年 2月号


 うらはらの関係

 経済が多少好転の兆しがあるというが、失業率は依然として高く、その中で皆もがいている。経済の成長が殆どない状態では一つの変化がいい面と悪い面を生む。
 円高で輸出企業は売り上げを円にするとお金が予定より減ってしまう。しかし外貨のまま使ってしまえば害はない。エネルギー、食品衣料などの輸入企業にとっては非常にありがたいことである。百円を切ると大変なようであるが。円高で外国債券の値段が下がってしまったと考えれば損であるが、逆に資産を外貨で考えたら、円資産があるので資産は増えたことになる。
 地価の値下がりも、財産が目減りしたと悲しむか、いい不動産が手にはいるようになっと喜ぶか。
うらはらの関係はいろいろなところで目につく。今それが大きく表れているのがパソコンのハードの世界のような気がする。
 パソコンの世界はハードの演算能力、記憶容量の増加とソフトの進化(どんどん複雑化、容量増)のシーソーゲームが続いてきた。登場した頃に比べ二桁以上の能力増が平行しておこっている。記憶装置についていうと十五年前最初に買ったパソコンは一メガバイトくらいであった。当時のワープロや表計算ソフトの容量使用はこれくらいだった。いま使っているパソコンの記憶装置は二十ギガバイトであるから二万倍である。これまではソフトの進化にパソコンが追いつかず、購入して一年過ぎると記憶容量が不足してソフトが入らなかったり、作業スピードが低下を来たし、買い換えざるをえないものであった。
 ところが今家で使っている八台目になるパソコンは購入して二年半を過ぎているが、いまだに不便を感じない。これまで通例二年は持たなかった。ソフトの改訂による容量・作業量増よりも機械の能力増の方が大きかったのでいまだに不便を感じない。このことはハードの開発が先行したとことを意味する。蛇足になるが最近のソフトは改訂を頻繁にやるが、高度な作業ができない普通の使用者にとって便利になって買って良かったと思わせるものは少ない。
 高価なハードの買い換えを頻繁にしなくて良くなって有り難いことであるが、そのことはパソコンハードの買い換え速度が落ち、購入需要が減り、コスト競争がますます激しくなってしまうことになる。必死に苦労してハードの開発進歩がソフトに先行するようになったら、このことがハードの値段低下と需要を減らし、ハードメーカーを苦しめる結果になっている。
 パソコンがソフトのように寡占状況であったら、買い換え需要が減らないよう開発スピードをほどほどにしているのでないだろうか。