逆転の思想-13-
                水道公論2003年10月号


 アウトソーシング

 先日「自治体のむだ遣い」というタイトルで高名な女性作家の論説が一般紙に載っていた。
 その主旨は自治体が講演会の企画、手続きを代理店にまかせているので手数料がむだであるというものである。ホームページ作成のような専門技術が必要なものは専門家にまかせなければいけないが、講演会の交渉、運営など専門知識や技術を必要としないものは自治体職員が直接行うべきであるというものである。
 アウトソーシング万能の時代にこういう論調を拝見するのは非常に興味深い。委託した先の管理職などの給料、会社管理経費などがオンされてお金が支払われる。また仕事を委託する場合、仕事の趣旨、求められる成果など委託先に多数の情報を伝えるという大きな手間がかかる。
 過去に、公務員の仕事をしていた経験からすると、仕事を自分で考えて実施していけばいろいろな工夫ができるし、いい仕事が出来るので、もっともな見識である。
 しかし、あまりにも沢山の業務を抱えていて、時間もどんどん迫ってくることが多く、可能なものは誰かにお願いせざるを得ない状況であった。
 もうひとつの指摘は、自分の金だったらこんなことしないだろうというものである。
 自分のお金だったら、ブランド品のように自分が満足すれば高くてもいい。しかし公費の支出は、回りから多数のチェックを受ける。常に外部から見て非難されないことが要求されるのである。
 公務では、いかにいいものでも、個人の工夫は評価されにくい。講演の業務を担当する場合、どういう内容が考えられ、そのうちどれがいいか、また内容に合う、どういう先生がいて、誰にお願いするかは、けっこうその世界を勉強しなければいけない。講演会でも、何故この先生に依頼したのかと聞かれた際に、担当者が考え決定した場合、客観的な説明が求めらる。また、どんなにいい企画でも、いい企画であるほど特色が出て、いちゃもんがつけられる可能性が高いが、有名なイベント会社に頼みましたという説明なら通ってしまうのである。イベント会社がやっても、期待する講演にならないなど、検討をしているかどうか疑わしいようなケースも多いが。
 どうすればいいのか、難しいが次のことが考えられる。
 まず実際の業務執行、特にお金の支出方については柔軟化し、権限をできるだけ下ろして、責任体制をはっきりすることがある。色々な人が関与すると、平凡なものになってしまうことが多い。しかし権限が下に行くと言うことは、どうしても勝手にやってしまういう問題が起きやすい。このため成果の評価をしっかりやることが大事と考えられる。
 公務の場合、執行まではチェックが多いが、業務に一番詳しい担当部署での成果評価は、あまりしっかり実施されない傾向にある。
 効率的な仕事をしていくという見地から、執行のシステムをよく考えていく必要がある。