逆転の思想-7-
                水道公論2003年 4月号


 料金算定 その2

 地球温暖化による異常気象の日常化が心配されている。気候の熱帯化や砂漠化など怖いことが多い。そうでなくても降雨量は変動が大きく、人口に比べて水貯留量の少ない我が国の大都市地域では時々渇水に見舞われる。
 渇水になったとき上下水道の事業体は苦しい立場に追い込まれる。水不足対策でバルブ操作や水使用の削減の広報活動で職員が総動員となるなど経費がかさむ一方、水使用量が減って収入が減り、渇水騒ぎのおさまったあとに開かれる決算委員会で経営改善策を迫られることになる。
料金算定の考え方には基本原則の他に、慣例がある。
 新幹線、航空機など交通機関は夏休み、お正月など旅客が多い時期は値段を割引しないことが慣例化している。混雑するのに高いのは何故だという不満もあるが、効率的な社会形成のためピーク需要をできるだけ減らすことは重要である。
 この慣例を水道にも一般化したら社会的に円滑に物事が運ぶように思われる。平常時は割引し、水が不足してきた時点で通常料金にする方法である。この方法であれば渇水時に高い利用料になって水需要は減るし、収入も最低限確保される。
 渇水時だけ値上げする方法があるけれど、実態が同じでも、利用者の感情を逆なでする感じで、交通機関のように普段割引する方が馴染みやすいと思われる。
 こういう議論は以前からあったと思うが、表立っていない。
 新しい費用負担原則の採用は各地の管理者が皆一緒の広報活動で説明し、浸透を図り、慣例にしないと成功できない。
 検針の時間のずれをどうするかとか、水不足というサービスの低下に関わらず料金が上がるというのはなにごとだという指摘など議論が多いと思うが、水不足は自然現象によるものであり、水使用を節減する効果があり、事業の安定化に資するものであれば結局は受け入れられるものと考えられる。
 高速道路の今後の方向付けについての審議会で料金を引き下げることが言われている。
 利用者を増やすための料金改定であるなら、同様に季節料金として利用が少ない時期に限るべきである。電気の深夜電力、飛行機や新幹線の繁忙期料金設定はピーク需要を分散させる事業の運営管理の効率化を図る上で重要なことである。高速道路も利用者にピーク需要を減らすインセンテイブを形成していかないと、効率の悪いものになる。