逆転の思想-5-
                水道公論2003年 2月号


 社会的サービス

 体の不自由な人ができるだけ色々なところに出かけられるよう、駅などでエレベーターなどバリアフリーの工事が行われている。
 地下鉄駅などけっこう整備されてきている。しかし乗り換えのない駅などまだ整備されていないところも多い。朝夕のラッシュで多数の人で混雑する駅の構内で仕事をするのだから、段取りが難しく、工事日数はかかるし、費用も非常に嵩むものと思われる。
 足の悪い母親が一度地下鉄で有名デパートに行きたいというので可能かどうか調べてみた事がある。母親は平らなところはゆっくり歩けるが、階段の上り下りができない。
地下鉄駅に問い合わせたところ、すぐ適切に教えてくれた。その駅ではホーム、改札口階間の移動はエスカレーターとエレベーターがあり可能であった。また地上への出入りについては難しかったが、まがりなりに階段を使わないで地上に出る方法を教えてくれた。
 一方地下鉄から地下でつながっているデパートの出入り口は地下鉄通路から階段で数段上がるようになっている。デパートの担当窓口に電話で問い合わせたところ、最初返事ができなくて待たされた後、上がれますという答えだった。その後確認のため、現場に行ってみたら階段を使わずに上がれないので、そこの案内嬢に聞いたところ、やはり階段以外の方法はなかった。バリアフリーは多数のお客が多いところでは特に重要であり気をつけていると思うが、このデパートではお粗末のようであった。
一般に、バリアフリー対策などの社会的なサービスは公企業の方が充実しているようである。
 料金議論に出てこない郵便事業の良さとして転送サービスがある。引っ越しなどに際して一定期間無料で転送してくれることは非常に有り難い。このサービスは一年だけで、有料でいいから延長できるようになっているといいが。目立たないが公共のサービスに多く見られる良さである。これに関連して民営化の後、番号問い合わせの料金が高くなった電話事業が思いうかばれる。
 公企業の方に無料サービスが充実して見えるのは収益を上げることよりもサービスの充実が強く意識されるからだろうか。一方もう一つの理由が料金の設定、変更が弾力的に行えないためと考えられる。料金の最終決定権が議会など事業体と違うところにある事の多い公企業はちょっとした新規サービスに関連する改訂など関係方面の説明や手続きに手間がかかり、結局改訂が行われないで無料でのまま出発する。こうなると仕事が大きくなっても有料化は難しい。
 公企業私企業に関わらず企業の行動はその根元の意思決定構造から特徴づけられる感じがする。これを改革することも重要でないだろうか。