逆転の思想-4-
                水道公論2003年 1月号


 料金算定

 我が国の高速道路の運営方式が大きな焦点になっている。高速道路料金体系の大きな批判として交通量の多い東名高速の売り上げを結果的に地方の高速道路に回しているのはおかしいというものがある。
 東名を常に利用する立場に立つと自分たちの払ったお金が地方の高速道路整備にまわされるのは納得できない。
 運営、料金計算を全国一律にするのか、事業細分ごとにするのかの決定の問題は政策にかかる課題であって、どれがいいというものでもない。
 高速走行では燃料も余計に食うからガソリン税も余計に払っていることになる。高速道路の運営を考える場合、税金も一緒に考える必要が出てくる。
 面白いのは通信事業である。郵便事業は全国どこでも同じ料金というシステムの採用がされている。
 イギリスで、全国均一の料金でサービスを提供する「全国均一料金制度」と、切手を貼ってポストに投函すれば確実に相手に届く「ポスト投函制度」が始まり、誰もが安価で容易に利用できるようになった。この制度は全世界の郵便制度の見本となり、日本では、前島密により明治に導入され、その名前は教科書に載っている。
一方で、電話料金は距離によって違う。昔は遠距離と市内ではもっと大きな違いがあった。最近は大分改善されているが、 公衆電話で距離が三二0kmを越えると市内の十三.五倍となる。
同じ情報通信分野の独占企業でこれだけ違う。なぜこれらが並存してきたのだろうかと不思議になる。我が国だけではなさそうだが。
 JRについてみると地方の赤字路線を過密輸送の大都市圏通勤鉄道が救っていると考えられる。住環境が改善されつつあるのに世界に有名な通勤地獄の改善が、大幅黒字と思われるのにあまり進まないことに反発する世論がなぜ湧き上がらないのか不思議である。世論を作る人々の移動が車が主であるためだろうか。路線ごとに別採算にすると例えば新規路線は千葉県の北総開発鉄道、東葉高速鉄道みたいに運賃がえらく高いことになる。
 これらの新路線鉄道の採算は料金が高いのに関わらず良くないと考えられる。高額の建設費を鉄道利用者から乗車賃でしか回収できないからである。
 一方鉄道開通によって駅周辺の土地の価格が上昇し、桁違いの大きな利益が只でもたらされている。開通による利便向上が鉄道事業の出資者に還元されないで、別なところに行ってしまっている。こういう理不尽を変えることが改革と思うが。
 今後公企業の合理化はますます強く迫られることになる。この中で広域化がある。これまで違う体系で運営してきた団体が一つになった場合、使用料や料金体系をどうしていくかはどれがいいということもないようで大きな課題である。決定の問題であるから、うまく足並みを揃えればいいと思うが。