逆転の思想-3-
                水道公論2002年12月号


 寡占状況のもたらすもの

 寡占状態を最も感じるのがパソコンの基本ソフトのOSである。ウインドウズの一方的支配が続いている。OSを武器に、一般業務ソフトまで独占状態にしつつある。パソコンの仕事で最も重要なのは表計算ソフトによる作業である。筆者はロータス一二三を標準的に使っている。表計算といえば昔はこの一二三が全盛であった。これがいつの間にエクセルに代わられ、今一二三を使う人はあまりいない。パソコンソフトはメール通信などによりますます一つのソフトに集中する傾向がある。現在メールでファイルを送るのに一二三は標準的に使えない。一二三もエクセルでファイル作成できるようになっているが同じようにはならない。結局エクセルを使わざるを得ないようになっている。インターネット閲覧ソフトでも先行するネットスケープナビゲーターが追い落とされた。日本語ワープロの世界でも一太郎が苦戦している。オフィスと呼ばれるビジネスソフトを束ねたソフトでMS社のものは何万円もする。一方ロータス社は桁違いに安い値段で片隅に置いてある。競争していた頃はMS社のオフィスソフトも高くなかった覚えがある。
 OSであるウインドウも九五から始まって、九八,二〇〇〇,Me,XPと改訂されている。改訂の度に便利になり、トラブルが少なくなると宣伝されるが、一般的な利用者と考えられる小生にとって使ってみた実態は殆ど良くなっていない。OSの改訂により一般ソフトも改訂せざるを得なくなり、利用者は莫大な出費をさせられている。寡占による巨額の利益をさらなる寡占に向けて活用しているようである。寡占状態については法体系が整備されていると言うが、我が国では問題にされることがないようである。
 パソコンの便利さは機械の性能向上によりどんどんよくなっているが、動作不安定のOSの欠陥はあまり改善されていない。何十万円の商品で、突然動かなくなることがあることが当たり前になっているものは殆どない。パソコンの発達が日本の家電企業主導によるものであったなら、スイッチを入れたらすぐ動き、稼働の信頼性の高いものになったであろう。ただし、買い換え必要性の頻度は増えていただろうと想像される。
 欠陥の少ないOSを作ると、利用者が改訂に応じなくなるから信頼性向上の改善はほどほどにしているのだろうと考えたくなる。結局、ほかの会社が入れないように、また利用者がお金を使うように最高の効率で運営している感じがする。競争社会の究極の姿なのだろうか。