逆転の思想-1-
                水道公論2002年10月号


 競争・サービス・公益

  出張の時、飛行機と新幹線どちらにするかはけっこう人によって好みがあるようである。小生どちらかといえば新幹線に乗る傾向があり、飛行機出張は少ない。短時間であるが、狭いところに押し込められるのと、乗り降りの際、セキュリテイチェックとか搭乗口とかで並ぶのが好きでないので新幹線派である。しかし新幹線で長時間座っているのが耐えられないという飛行機派も多い。
 小生が飛行機に乗ると、いつも羽田空港で長い距離をえんえんと歩いた末にバスに乗って飛行機まで行くことになる。バスに乗せるのだからもっと便利なところからにしたらと思うのだが。飛行機に直接乗れる搭乗口が沢山あるのに、いつも遠いバスになってしまう理由を考えて至った推論が独占事業であった。
 つまり新幹線派の小生が飛行機を利用する場合は、飛行機の独占区間で、サービスを悪くしても新幹線にお客がいくことがないから、不便な搭乗ゲートを配分していると考えられる。送迎のバスだってあんなにすし詰めにしなくてもいいのに。
 民営化したJRについて昔より良くなったといわれている。しかし新幹線など航空機との競争が激しい路線ではサービスが良くなっているかもしれないが、独占区間ではサービスは良くなったとは感じない。
 昨年まで利用していた常磐線緩行線はラッシュが過ぎるとどんどん電車を減らして昼間に一時間に五本しか列車を走らせない。松戸で常磐線に接続するローカル路線の新京成電鉄でも一時間に六本運転しているのに。
 ともかく常磐緩行線は客をいかに立たせるかを目標にしている運営をしているようである。土日でも座れることは少ない。電車賃の安い綾瀬からの地下鉄千代田線区間では運行本数が二倍になる。
 常磐線本線でも東京を離れると昼間の運行は非常に少なくなる。筑波に行って帰り長時間待たされて、あげくにけっこう人が乗っている一五両もある長い列車が入ってくる光景は異常である。八両編成を二本にすれば乗務員の人件費が増えるだけで、サービスはずっと向上する。高い電車賃を払っている、遠くの利用者が悪いサービスを受けている。いやだったら引っ越すしかない。
 競争によるコストダウンが至上命令の昨今である。どの企業も売り上げを確保し、経費を最小限にするため一所懸命やっている。こういうことのしわよせがどこかに行く。サービスが悪くてもお客が離れなければ経費節減のためどんどん質を落とさざるを得ない。
  航空会社の競争激化によって、ローカル路線の廃止などサービスの低下がもたらされるように、しわ寄せは至るところに起っている。 首都圏は関西圏のように鉄道間の競争がない独占状態にある。地価の下落、工場跡地の住宅供給が進み、住む側主体の市場になり、交通機関のサービス競争が早く始まることを願うものである。