|
|||||
1,はじめに 小学校4〜5年の頃であろうか、ある日父親がレコードプレーヤーを買って、家ではじめてレコードというものを聞くことができた。SPレコードで何枚もあったベートーベンの田園交響曲を喜んで聞いていた記憶がある。SPは大きな盤なのに数分しか持たず、すぐ次の盤をかえなければいけなかったが、大学生になるまで、一番好きなのが田園であった。また、勤めて最初のボーナスで、真空管でなく当時普及品が出たばかりのトランジスターステレオを買って聞いたワルター指揮のLPレコードの田園も良かった。CD時代の今、ワルターの復刻版も手に入れているが、趣向も変わって殆ど聞かなくなってしまった。 中欧の観光に行くとき、ベートーベンの小川があるので訪問するように勧められ、ちょうどウィーンで半日自由時間があってでかけることにした。 ベートーベンの小川はウィーン中心街の北ハイリゲンシュタットにある。インターネットでいろいろ調べたが親切なページがあって、行き方とか交通機関、地図などを細かく説明してくれていた。http://www.geocities.jp/gruessgottwien2003/index.html バスもあるが最も時間が効率的に使える方法を考え、地下鉄U4の終点ハイリゲンシュタット駅からタクシーをチャーターすることにした。初めての海外観光旅行で、つたない英語も通じて運転手があちこち回ってくれたので他の国もそうかと考えていたが、スペインやフランスでは殆ど通じないとのこと。簡単なことでも分からない状態ではタクシーに乗れない。日本も同じなのであろう。
ハイリゲンシュタットの北側で、ウイーン市街地のはずれにある。ベートーベンが、この辺を散歩しながら田園交響曲の構想を練ったとされる。本当の小川で流路幅は40cmくらいで、ところどころ擁壁があるなど見栄えはあまり良くなかった。小川に沿って緑地が続いていて両側は住宅地になっている。小さな広場には胸像も立っていた。川に沿った道路はBeethovengang(ベートーベンの小径)という名の付いた道でベンチがあったりして延長は7百メートルくらい。小川はもっと上流まで続いていて、地図で見ると5百メートルもさかのぼると畑が広がる。川の流域は結構広く、1平方キロ以上くらいありそう。ほんの小川であるが、ベートーベンが川沿いの道をよく散策しながら交響曲を考えたというとありがたみが出てくるし、昔住宅街はなかったと思うと、田園の雰囲気を感ずる。丘の方に行くと、遠くからしか見えなかったが、家の後ろの丘にブドウ畑が広がっていて、交響曲にある鳥のさえずりが聞こえるような、いかにも田園の世界という感があった。
|
|||||
ドナウ川の写真を撮りたかったので、少し遠いがベートーベンの小川をずっと北に上がっていき、カーレンベルグの丘を過ぎてもっと奥のレオポルドベルグの展望台までいってもらった。ここからウイーンの街とドナウ川を見ることができる。ドナウ川を挟んでこちら側の旧市街と向こう側の新市街を見渡せる。ドナウ川はウイーンのところで本川とバイパスと思われる新川に分かれ、二つの流れは平行して、ほんの少しカーブしながらまっすぐ流れている。また古い堰があってそこから旧市内へドナウ運河が分かれている。ドナウ運河は蛇行して流れていて、新川のむこうにも蛇行した流路があるので、昔は運河などが本流で、今の本川もバイパスとしてつくられた感じがする。 |